研究課題/領域番号 |
19KK0065
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
山内 博 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (40452213)
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研究分担者 |
宮本 雅彦 筑波大学, 数理物質系(名誉教授), 名誉教授 (30125356)
荒川 知幸 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (40377974)
島倉 裕樹 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (90399791)
川節 和哉 熊本大学, 大学院先導機構, 准教授 (90853531)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2025-03-31
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キーワード | 頂点代数 / W代数 / 共形場理論 / 4D/2D双対性 / テンソル圏 |
研究実績の概要 |
当該年度の研究代表者および研究分担者の研究実績を要約すると以下の通りである。山内は前年度から引き続いて Thomas Creutzig, Ching Hung Lam と共同で頂点代数の拡大に関する研究を行い,ミラー拡大を中心に,単純カレント拡大では得られない頂点代数の拡大例について考察を行った。また,Cuipo Jiang, Ching Hung Lam とはイジング元で生成される頂点代数に関する特徴づけについても研究を行った。荒川は4D/2D双対性を動機として、アフィンKac-Moody代数のウエイト表現と小さな量子群との関係を研究した(川節とCreuztigと共同研究)。また,4次元理論から現れる頂点代数に定まるとされるRフィルトレーションの,数学的定義を与えた(Moreauと共同研究)。川節は昨年度に引き続き,4D/2D双対性に関連するログ共形場理論の表現論の予想を数学的に厳密に証明することを目指し,表現圏の構造を調べた。また,N=1ヴィラソロ超頂点代数の拡大の様子などを調べ,それを用いて,4D/2D双対性と関連するW代数について,その有理性や表現論の研究を深めた。島倉は Lam と共同で中心電荷24の正則頂点作用素代数を10個の頂点作用素代数と格子頂点代数とのテンソル積の単純カレント拡大として研究を行った。その結果,中心電荷24の正則頂点代数の自己同型群の形を決定することができた。宮本はLamと共同で中心電荷24の正則頂点代数の分類に関する研究をおこなった。非アベール型のウエイト1空間を持つ正則頂点代数から、W-元と呼ばれる特別な元を利用すると,その軌道理論構成では常にリーチ格子頂点代数が構成できることをローレンティアン頂点代数を利用して分かり易く証明した。この結果により,多くの正則頂点代数間の関係が明瞭になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度も新型コロナウイルスの蔓延により,国際的共同研究を推進するという本研究課題は多大な影響を受けた。国内外への出張が極端に制限され,当初予定されていた海外研究機関への研究代表者・研究分担者および研究協力者の派遣はほぼキャンセルとなった。年度末の2022年3月になって,ブラジルの研究所IMPAで開催された国際長期研究プログラムに山内と荒川が参加し,ホストであるJethro van Ekeren, Reimundo Heluaniらをはじめとして,各国から集まった多くの参加者と対面で討論を行うことができた。対面での議論はオンラインでの会議と比較して圧倒的に共同研究につながりやすい。この意味で,昨年度よりは状況は改善されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
前年度と同様に,引き続き次の4つのプロジェクトを中心として,研究を進める。A.正則頂点代数の属の研究:すべての有理的頂点代数はある正則頂点代数に埋め込められる予想が提唱されており,正則頂点代数の構成と分類は有理的頂点代数の分類において本質的である。島倉は中心電荷が大きい場合の正則頂点代数の分類について研究を進める。宮本はリーチ格子に付随した頂点代数の拡張深洞について,現段階では分かっていない幾何学的な解釈を明確にすることを目指す。B.四次元多様体と頂点代数の拡大理論,C.ログ共形場理論と保型形式,D.4d/2d双対性:この3つのプロジェクトでは有理的でない新しい頂点代数のクラスを扱う共通点がある。山内はB, Cにおける拡大理論について,川節はC, Dに関わる表現圏とそこに現れる保型形式について,荒川は特にDについて,引き続き研究を行う。また,研究代表者および研究分担者だけでなく,研究協力者である杉本,森脇,元良,佐藤らも必要に応じ海外共同研究者の元へ派遣し,A, B, C, D のテーマに関係する研究を行ってもらう。その上で,長期滞在を通じて得られた研究知見について,国内外で連絡を密にとり,共有することで,グループとしての研究の方向性を決定・提案していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により,研究代表者・研究分担者および研究協力者の研究集会への参加ならびに研究打ち合わせのための海外出張ができない状況が続いたため,ほとんど研究費を使用することができなかった。2022年に入ってからは各国とも入国規制を撤廃しつつあるため,次年度についてはより活発に海外研究者を訪問できるものと期待している。
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