研究課題/領域番号 |
19KK0069
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 卓 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (70354214)
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研究分担者 |
浅井 晋一郎 東京大学, 物性研究所, 助教 (00748410)
奥山 大輔 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (30525390)
益田 隆嗣 東京大学, 物性研究所, 准教授 (90313014)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | 冷中性子分光 / マルチアナライザー / 磁性準粒子 / 非相反性 / トポロジカル保護 |
研究実績の概要 |
磁性体中の協力的なスピン揺動はマグノンやトリプロン等の素励起(磁気準粒子)を形成するが、これらはスピン量子を運搬するためスピントロニクスデバイスの観点から大きな注目を集めている。これら磁気準粒子の保護と運動制御の学理を確立するには、磁気準粒子の運動を高精度に測定する必要がある。そこで本研究では米国研究グループと共同で新世代マルチアナライザー冷中性子分光法を開発することにより、磁気準粒子運動の高精度測定を実現することを最終目標としている。 本研究では現在までに米国側研究者と共同で種々の高効率中性子集光法の検討を行い、その結果として、IRIS型集光法に基づく実証機の製作を行うことと決断した。2021年度前半では、この実証機の詳細設計および関連する電気系および機械系の検討を進め、2021年度後半に実証機の製作を開始した。当初この実証機は米国ORNLで試験する計画であったが、2021年度前半の段階でコロナ感染症の収束が見通せず設計の前提としてORNLでの試験を仮定することは計画の遂行の観点から無謀であると判断し、運良くその時点で再稼働が確定した国内の JRR-3 原子炉での試験を前提とする設計に変更した。2021年度末に実証機が完成し2022年度前半に米国側研究者と合同でコミッショニングを開始する予定である。 他方、中性子散乱による磁気準粒子研究に関しては、国内での試料作成を進めるかたわら、2022年度の米国での実験実施を念頭に米国側研究者と実験計画の詳細を議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績に記したように、2020年初頭からの新型コロナ感染症拡大により、他の多くの国際共同研究と同様、実際に現地に赴き議論や実験を行うことが極めて難しい状況が続いている。その中で、2021年度も主に電子メールベースで議論を続けることで、IRIS 型分光機実証機の詳細設計とその製作を行うことが出来たことは一定の進展と判断している。この実証機のシミュレーションや詳細設計に関して、益田グループの博士課程学生を中心に米国側研究者と協力して精力的に実施し、その結果は学会発表されている。また、磁気準粒子研究に関しても、国内での新物質開発や数値シミュレーションを中心に一定の成果が出ている。しかしながら、国際共同研究としては総合してやや遅れていると判断する
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に入りようやく海外渡航に現実味が出てきた。実際、本研究代表者もすでに一度米国での実験を実施し、かなりの困難はあるものの不可能ではないことを確認した。コロナ感染症の状況が今と変わらない、もしくはより改善すると仮定するならば、本年度はこれまで実施できなかった米国ORNLでの磁気準粒子研究を集中的に実施することができるであろう。具体的にはこれまで国内の新物質開発研究により見出されているYb系フラストレート量子磁性体、銅系アームチェア型一次元化合物、バナジウム硫酸塩物質等を中心に中性子非弾性散乱実験を実施する。これらの実験には研究代表者ならびに研究分担者が実際に渡航し、米国側実験者と共同研究を実施する。一方、IRIS型分光器実証実験に関しては昨年度の状況から国内での実証実験をせざるを得なかったため、米国側研究者のリモート参加による共同国内実証実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年初めから続く新型コロナ感染症拡大のため、予定していた海外渡航等はすべて中止とせざるを得ない状況が続いている。そこで、これらに計上していた費用をすべて2022年へ計上している。現時点(2022/04)で、すでに米国渡航が不可能ではないこと、さらに米国側研究所が外国人を制限付きではあるものの受け入れることを確認しているため、本年度はできるだけ多くの海外実験を実施したい。従って、繰越予算は主に海外実験の渡航費用およびその他必要費用として使用する。
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