研究課題/領域番号 |
19KK0070
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
美藤 正樹 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (60315108)
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研究分担者 |
片宗 優貴 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (50772662)
高阪 勇輔 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60406832)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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キーワード | ランタノイド系 / 希土類金属 / 強磁性 / 高圧力 / 中性子回折 / 磁気測定 |
研究実績の概要 |
ラウエ-ランジェバン研究所(フランス、略称ILL)において高圧力下中性子回折実験を実施するためには、高圧力発生装置や試料の面で周到な準備が必要である。初年度に引き続き、2年目は、日本サイドとザラゴザ大学物質科学研究所(スペイン)そしてILLサイドの間で打ち合わせを重ね、ダイヤモンドダイスの購入とILLでの共同利用実験の課題申請を行うことができた(現報告書作成の段階で、2021年度に実験が実施できることが確定している)。また、関連する必要不可欠な実験である、高圧力下精密磁気測定を推進し、他のどのグループよりも優れた成果を得ることに成功した。2020年度の具体的な実績を以下に示す。 [1] ランタノイド系強磁性体6種の、Gd, Tb, Dy, Hoに関する高精度高圧磁気測定を実施し、磁化が検出不可能になる圧力域を特定し、論文発表した[Phys. Rev. B (2021)]。 [2] 高圧発生装置については、当面ILLサイドで開発された装置を使用するが、圧力を発生させるアンビル部分の仕様は、到達目標圧力によって違う。そこで、Gd用の実験に対するアンビル(ダイヤモンドダイス)の仕様を選定し、アンビルの購入は実施した。 [3] 一連のランタノイド系強磁性金属6種の中性子回折実験を遂行するにあたり、ErとTmに対しても30 GPaまでの領域で高圧磁気測定を実施した。 [4] ランタノイド系強磁性金属は、高圧下でSmが有する結晶構造を経て順次高圧相に推移する。そこで本研究の比較対象として、Smの高圧力下磁気測定を実施し、論文投稿を行った。 [5] Gd, Tb, Dy, Hoの高圧力下中性子解析実験の課題申請を行い、2021年度に実験を実施することを確定させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度中にフランスのラウエ-ランジェバン研究所(The Institut Laue-Langevin, 略称ILL)を訪問し、購入したダイヤモンドダイスを専用の高圧発生装置に装着し、高圧中止し回折実験の細部を詰める予定であったが、新型コロナウイルスの蔓延によって渡航中止を余儀なくされた。しかし、課題申請が行われ、2021年度の実験が実施できる目途はついている。幸い、Gd, Tb, Dy, Hoに関する高精度高圧磁気測定の結果を論文発表することが出来、また、Smについても過去に例のない高圧磁気測定を成功させることが出来た。このように、高圧中性子回折のを実施に当たり、周到な準備を行うことが出来た。2021年度はこれまでの遅れを少しでも取り戻したい。
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今後の研究の推進方策 |
フランスとスペインで、ワクチン接種者の増加によって、新型コロナウイルスの感染者数が減少し、国際共同研究の計画を詰めることができる段階になったところで、日本側のメンバーが渡航をする。しかし、当面は楽観できない状況にあることから、実験のセッテイングはフランスとスペインの共同研究者にお願いし、日本グループは遠隔実験の形で参画する。また、日本サイドは日本において、高圧力下磁気測定の再実験が必要なTmとErに対する研究を前倒して進める。結果的に、4年後の到達目標に変わりがないような状況を作るべく臨機応変の対応を取る。1年間の期間延長や第3国(例えばスイス)での類似実験の実施も視野に入れながら、少し長いスパンで柔軟に適切な計画を練る。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス蔓延のため、九州工業大学による海外渡航原則禁止とILLサイドの研究者の立ち入り禁止により2020年度に計画していた渡仏を断念した。そこで、代表者・分担者に対して配分していた海外出張旅費を繰り越した。2021年度以降の世界的な新型コロナウイルスの感染状況を鑑み、柔軟に渡航計画を立案する。状況次第では、研究計画を練り直し、旅費の一部を物品費購入に置き換えることも検討する。
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