研究課題/領域番号 |
19KK0070
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
美藤 正樹 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (60315108)
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研究分担者 |
片宗 優貴 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (50772662)
高阪 勇輔 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60406832)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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キーワード | ランタノイド系 / 希土類金属 / 強磁性 / 高圧力 / 中性子回折 / 磁気測定 |
研究実績の概要 |
・ILLにて、Gd, Ho, Tbの高圧中性子回折実験を行った。 まず、Gdについては、中性子吸収係数が0.77と少ない160Gd(98.1%)を調達し、ILLにて中性子回折実験を遂行したが、予想に反して全くGd由来の信号を観測することが出来なかった。実は、中性子吸収係数が259,000と著しく大きい157Gdが0.43%ほど含まれており、この極微量の同位体の存在が失敗の原因であったと考えられる。過去の研究を見ても、Gdの中性子回折実験の例はなく、その理由を思い知る結果となった。次に、Hoについては、0 GPaと8 GPaの圧力下で温度可変の高圧中性子回折実験に成功した。8 GPaでは、100 K以下で磁気秩序由来の磁気回折ピークを観測し、波数ベクトルと磁気モーメントの温度変化に関する実験的知見を得た。また、リートベルト解析によって、5 Kでの磁気構造を決定した。そして、Tbにおいては、3, 10, 16.5GPaでの温度可変の高圧中性子回折実験に成功した。磁気測定では磁気信号がノイズレベル以下になり観測できなくなった圧力域で、電気抵抗には異常が見られたキュリー温度付近で磁気秩序由来の磁気回折ピークを観測した。低温で強磁性磁気秩序が反強磁性磁気秩序に移行した可能性がある。しかし、予想に反して、Tbのネール温度付近での磁気回折ピークは観測されなかった。
・Smにおける磁場中高圧磁気測定に成功し、論文発表までこぎつけた。Sm構造とdhcp構造の境界圧力付近で強磁性信号を観測し、dhcp構造とfcc構造の境界圧力付近では外部磁場と同一方向に現れる磁化の信号は消失した。さらに、fcc構造とdistorted-fcc構造の境界圧力付近で外部磁場とは逆方向に現れる磁化信号を観測し、圧力誘起超伝導の可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍でフランスでの実験遂行が困難な中、研究協力者の協力のもと、Gd, Ho, Tbの実験に挑戦することが出来たから。
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今後の研究の推進方策 |
R4度はILLが長期のシャットダウンをする予定であり、HoとTbの磁気構造解析を丁寧に進める。Tbについては、ネール温度で観測された交流磁化の磁気異常の原因を解明すべく、高圧力下構造解析の実施を計画している。HoとTbの両方とも、実験結果の論文発表にこぎつけたい。また、Tm, Erの磁気測定実験を完全に成功させ、R5年度に実施予定の「Sm, Dyを含む4元素の高圧中性子回折実験」の準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス蔓延のため、海外渡航が困難な状況にあり、2021年度に計画していた渡仏を断念した。そこで、代表者・分担者に対して配分していた海外出張旅費を繰り越した。2022年度以降の世界的な新型コロナウイルスの感染状況を鑑み、柔軟に渡航計画を立案する。
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