研究課題/領域番号 |
19KK0072
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
千徳 靖彦 大阪大学, レーザー科学研究所, 教授 (10322653)
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研究分担者 |
城崎 知至 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (10397680)
岩田 夏弥 大阪大学, 高等共創研究院, 准教授 (70814086)
佐野 孝好 大阪大学, レーザー科学研究所, 助教 (80362606)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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キーワード | プラズマシミュレーション / 高強度レーザー光 / プラズマ物理 / 高エネルギー密度科学 |
研究実績の概要 |
本研究は米国・欧州と国際共同研究を展開し、最先端レーザー光であるペタワットレーザーによる高エネルギー密度プラズマの形成過程とプラズマの内包する機能の解明を目指す。新たな物理モデル等を開発しプラズマ粒子シミュレーションコードPICLSに組み込み、実験等によりモデルを検証する。さらに大学院生をプロジェクト内で育成することで、コードの開発・運用を中心に持続可能な国際ネットワーク環境を整備していくことが本研究の目的である。 本研究は2019年10月に開始したが、2020年春よりコロナ禍となり渡航制限により海外出張ができない状況にある。そのためZoom等オンラインツールを活用し国際共同研究を継続している。渡航制限が始まる以前に(2020年2月まで)に、共同研究者である米国ネバダ大学リノ校澤田寛准教授(2019年12月)、仏国ボルドー大学E. dHumieres教授(2020年1月)、ドイツロッセンドルフ研究所T. Kluge博士(2020年2月)が、大阪大学を訪問された機会に、個別のプロジェクトの方針について議論を行うことができた。また、米国ローレンスリバモア研究所に岩田夏弥(分担者:阪大・准教授)と千徳(PI)が1週間滞在(2020年1月)し、ペタワットレーザー相互作用の理論モデルに関して、S. Wilks博士とA. J. Kemp博士と詳細な議論を行い研究方針を策定した。これらの計画に基づいて、コロナ禍以降は、1ヶ月に1~3度のオンライン会議を各研究協力先と継続し、コード開発、物理モデルの検証などを実施した。これまでに、急峻な温度勾配での加熱モデル、高価数プラズマの形成過程、強磁場下のレーザープラズマ相互作用、ペタワットレーザーによる効率的なイオン加速モデル、レーザーイオン加速の多変量解析などの成果を、7本の学術論文として発表ししている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、共同研究により開発したPICLSコードによる研究成果を、7本の学術論文として発表ししている。具体的には(1)ボルドー大学dHumieres教授との共同研究「高強度レーザー光によるイオン加速の多変量解析モデル」に関して研究成果をPhysical Review Researchに発表した。本論文は博士課程の学生が筆頭著者である。(2)パデゥ大学の砂原淳博士との共同研究「高価数プラズマの形成過程における輻射冷却の影響」に関してPlasma Physics and Controlled Fusionに発表。本論文も博士課程の学生が筆頭著者である。(3)「ペタワットレーザーによる効率的な加熱とイオン加速の物理モデル」に関して、リバモア研Wilks, Kemp両博士との共著で、Physical Review Researchに発表した。本研究は分担者の岩田夏弥准教授が筆頭著者であり、論文の成果をベースにリバモア研の持つ世界最大出力レーザーによる実験施設に検証実験の提案を行い2023年の実験が採択されていることは特筆に値する。(4) ネバダ大学澤田准教授との共同研究「高強度レーザー光による等積加熱のモデルの検証実験」は論文にまとめ、現在Nature Communicationsに投稿(現在査読結果待ち)となっている。(5)ドイツロッセンドルフ研究所T. Kluge博士との共同研究「Warm Dense Matterの電気伝導率の計測」に関しても、現在論文投稿中(Physical Review X)である。以上のように、2019年から開始した研究成果が順調に国際共著論文として発表されている。オンラインツールを効率的に活用できたことで、コロナ禍以前よりもむしろ緊密に共同研究を展開ができた。しかし、現地へ赴けず、学生に異文化の人々との交流の機会がない。今年度以降、積極的に展開する。
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今後の研究の推進方策 |
2019年の研究開始からこれまで、高強度レーザー光によるプラズマ形成と高エネルギー密度プラズマ中の物理過程の物理モデルを、プラズマ粒子シミュレーションコードPICLSに組み込み、等積加熱過程、イオン加速機構などの解明を行い論文として発表してきた。オンライン会議が研究議論に有効なことがわかったので、今後も積極的に活用し、海外共同研究先と緊密に連携を進め、進行中のプロジェクトを継続するとともに、最新の情報を収集し次の展開を考える。昨年度から、カリフォルニア大学サンディエゴ校のA. Arefiev教授と、超高強度レーザーによる量子電磁気学過程、特に線形Breit-Wheeler過程による電子・陽電子対生成の物理モデルの構築を、週1回のオンライン会議で議論している。コードの開発も順調に進み、モデルを検証し成果をまとめて行くフェーズとなる。2022年はコロナ禍が落ち着き、海外渡航が可能と成りつつある。強磁場下での計算の高精度化も開始する。米国物理学会などの国際会議に学生らとともに積極的に参加し、研究グループとして国際的にプレゼンスを示す。また、若手研究者・大学院生に共同研究先での短期滞在をサポートし、国際的研究環境の中で切磋琢磨する機会を与えたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で海外共同研究先への訪問ができなかった。今年度以降、コロナ禍の改善の状況を見て、米国、欧州の共同研究先へと赴くとともに、国際会議等での発表を積極的に行う。
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