研究課題/領域番号 |
19KK0074
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
さこ 隆志 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (90324368)
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研究分担者 |
野中 敏幸 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (30506754)
木戸 英治 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (00633778)
藤井 俊博 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (50706877)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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キーワード | 最高エネルギー宇宙線 / 高エネルギー天体現象 / 空気シャワー / 大気蛍光望遠鏡 / 地上粒子検出器 / 粒子加速 |
研究実績の概要 |
米国ユタ州で推進するテレスコープアレイ実験とその拡張アレイのデータを蓄積し、宇宙最高エネルギー粒子の起源解明を目指す。地上検出器の維持管理と大気蛍光望遠鏡による観測を進めデータ解析を行うことで目的を達成する。 当該年度は、新型コロナウィルスの影響により、日本から米国サイトへの訪問は皆無だった。現地雇用技術者とユタ大学研究者の努力によって地上検出器の維持管理と半分の大気蛍光望遠鏡観測を継続できた。これまでエキスパートが担当してきた地上検出器の遠隔モニタシフトを、主要大学のスタッフと大学院生が担当できるようマニュアル整備と講習会を実施した。9月以降、東京大学、大阪市立大学、信州大学、大阪電気通信大学、米国各大学と持ち回りでの担当が確立した。大気蛍光望遠鏡は少数のユタ大学研究者が現地に滞在した上でのリモート観測を開始した。日本からもリモートシフトに参加し、コロナ禍での観測継続体制を確立しつつある。また、拡張アレイでの大気蛍光望遠鏡と地上検出機の同時事象記録に成功した。 週例会議で現地研究者・技術者と装置の不具合等について打ち合わせ、日本からの指示、物品の購入と送付を行いリモートだけではできない維持管理作業を実現している。また、安定したリモート作業実現のため、老朽化した発電機を商用電源に置き換える準備を進めた。米国土地管理局の許可を待って電線敷設工事を開始する予定である。 データの解析では、超高エネルギー宇宙線の到来方向に振幅3.3%の双極子異方性があり南半球のAuger実験の報告と無矛盾であること、超高エネルギー宇宙線が近傍銀河の多い超銀河面から到来していることを示すエネルギーと到来方向の関係の証拠、北天における超高エネルギーニュートリノの制限、雷放電に伴う宇宙線空気シャワー様事象の発見、最高エネルギーでの陽子大気衝突断面積の測定、などの結果を論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍で現地作業が思うように進まなかったが、リモート対応で検出器の維持管理と観測を継続しており、今後の有用なデータが蓄積できている。拡張アレイの一部(10%程度)に、集中作業によって改善させたい不具合があるが、これらが悪化しないのみでなく、少しずつ回復させる作業が進んでいる。運転状況も考慮した拡張アレイの性能に対するシミュレーション計算も進んでおり、初期データ解析では、これまでと矛盾しない結果が得られている。拡張装置が期待通りの性能で機能していることが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
最低条件として現在のコロナ禍での制限された運用を継続した上でデータを蓄積しデータ解析を進める。 現地訪問が可能になった場合、不具合が残る地上検出器を訪問し、拡張アレイの稼働率を100%に近づける。その後は、テレスコープアレイの検出機とあわせて、リモート・現地を組み合わせた効率的な維持体制を確立する。現在運転を止めている半分の大気蛍光望遠鏡観測のリモート化をすすめ運転を再開する。現地での緊急対応の可能性を洗い出し、地上検出器管理作業との統一を進める。拡張アレイのモンテカルロシミュレーションと実データの比較を続け、観測装置の性能(エネルギーしきい値、有効検出面積、エネルギー・到来方向決定精度等)向上を進める。拡張アレイの地上検出器と大気蛍光望遠鏡による同時取得事象の解析をすすめ、地上アレイのエネルギー絶対値の決定精度を向上する。TA及び拡張TAアレイのデータを蓄積しつつ解析をすすめ、テレスコープアレイが発見したホットスポットの確立を目指す。ホットスポット以外の各種異方性の兆候も示唆されており、これらの解析も進める。また、拡張アレイ大気蛍光望遠鏡データによる最高エネルギー領域での質量組成の解析も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で現地を訪問しての維持管理作業と観測ができなかった。渡航が可能になり次第、現地での集中作業と大気蛍光望遠鏡準リモート観測のための対策作業を行う。また、円滑なリモート作業を実現するよう、一部商用電源の敷設準備を進めている。当該年度に渡航ができなかった予算の一部を、この敷設費用にあてる。
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