研究課題/領域番号 |
19KK0075
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松田 恭幸 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (70321817)
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研究分担者 |
鳥居 寛之 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (20302838)
田島 美典 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 特別研究員 (20821838)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2022-03-31
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キーワード | CPT対称性 / 反水素 / 超微細構造 / 反陽子 / ペニングトラップ / マイクロ波分光 |
研究実績の概要 |
CERN AD(反陽子減速器)においては新しい反陽子減速蓄積リングであるELENAの建設作業が進められている。Covid-19の感染拡大とそれに伴う活動制限により建設スケジュールに若干の遅れが見られるが2021年度中にはファーストビームを供給するという目標は堅持されている。 ELENAの建設のため,2020年度中は反陽子ビームを用いた実験を行うことはできないことは計画立案当時から想定されていた。2020年度は計画されていた実験装置の大規模なアップグレードに加えて,Covid-19に対応して装置のリモート制御を可能とするためのコントロール装置の追加設置,ソフトウェアのアップグレードを行った。製作した多重リング電極とトラップ用電極については検収の上,現地へ搬送し,共同研究者によって設置されているが,この装置を用いて高効率に低温の反水素を生成するための実験パラメータの探索は,現地への渡航制限のために行うことが出来なかった。 また,これらの研究に平行して,海外の研究組織に所属する協力研究者を中心として,レーザーあるいは THz 光を照射することによって,生成された反水素のうち,励起状態にあるものを素早く基底状態に脱励起させる手法の研究開発が行われ,一定の成果を得た。実際に(反)水素原子に適用するための条件の解明とその実証は2021年度以降の課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Covid-19の感染拡大に伴う CERNにおける活動制限と,日本政府と所属機関による海外渡航制限をうけて,現地における実験装置の設置・試験に遅れが生じている。現地あるいはヨーロッパ在住の共同研究者とビデオ会議等を用いて密に連絡を取りつつ,作業の遅れを最小限にとどめる努力をしており,2020年夏ごろに現地での活動制限が緩和された時期があった(その後,秋以降に再び強化された)こともあって,現時点で顕著な遅れには至っていない。 2020年度に制作を行うこととしていた多重リング電極とトラップ電極については納品され,検収を日本で行った後に現地へ搬送し,共同研究者によってすでに設置されている。最終的な性能試験と高効率な低温の反水素合成にむけてのパラメータ探索実験は2021年度に行う予定である。
また,日本人若手研究者育成のために,大学生を対象とした現地における研究体験教育プログラムを実施する予定であったが,これも所属機関の渡航制限により中止となり,簡単なイントロ講義を行うにとどまった。
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今後の研究の推進方策 |
現時点で現地での制限は緩和される方向にあり,渡航しての活動が可能となり次第,最終的な性能試験とを急ピッチで進め,今年中に予定される ELENA からのファーストビームを最大限に活用する体制を作る予定である。実験装置の大型アップグレードに必要な物品の購入・製作・輸送・設置はほぼ終了しており,あとは現地での立ち上げ作業にかかっている。集中的に,かつ安全に配慮しながら作業を進める予定である。
また,研究と直接関係のない,教育プログラムによる海外渡航が可能となる時期は現時点では見通すことができないが,こちらも関連部署との連絡を取りながら進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年初頭からの Covid-19の感染拡大にともなうヨーロッパ現地の活動制限ならびに所属機関の渡航制限により,現地へ渡航しての研究活動を行うことが出来なかったことが次年度使用額が生じた大きな理由である。 現時点で,現地での活動制限は緩和に向かっており,国内の状況が改善し次第,ある程度の人員を確保して集中的に現地での立ち上げと調整作業を行い,今年後半に予定されている ELENAからのファーストビームを最大限に活用できる体制を整える計画である。
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