研究課題/領域番号 |
19KK0080
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松永 典之 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (80580208)
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研究分担者 |
小林 尚人 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (50280566)
辻本 拓司 国立天文台, JASMINEプロジェクト, 助教 (10270456)
鮫島 寛明 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (10748875)
濱野 哲史 国立天文台, ハワイ観測所, 特任研究員 (70756270)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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キーワード | 近赤外線高分散分光 / 恒星化学組成 / 中性子捕獲元素 / 銀河系円盤 / チリ共和国 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、近赤外高分散分光観測によってセファイド変光星などの中性子捕獲元素組成を計測し、銀河系円盤においてそれらの元素がどのように増えたかを調べることである。そのために、我々が開発したWINERED赤外線分光器をチリ共和国のラスカンパナス天文台にあるマゼラン望遠鏡(口径6.5m)に設置して観測を行う。マゼラン望遠鏡は、米国のカーネギー天文台(ラスカンパナス天文台の上位機関)が他の5機関と共同で運用しているもので、本計画ではチリの天文台での観測を米国の研究者と共同で進めている。 WINERED分光器のマゼラン望遠鏡への設置は、2019年度から行う計画ですでに準備を進めていたが、2020年初頭からのコロナ禍のためにチリでの滞在・作業が全く行えなかった。その後も、何度かマゼラン望遠鏡での観測時間が割り当てられ準備を進めたものの、やはり分光器の設置を行えなかった。2022年7月には、現地で観測の準備を行うことができたが、悪天候と積雪のために観測を行うことができなかった。そして、2022年9月にようやくマゼラン望遠鏡での初観測を成功した。個数は少なかったもののJバンドで12~13等級の暗いセファイドを観測し、口径6.5mのマゼラン望遠鏡での予想感度に見合う高品質のデータが得られることを確認した。本研究で組成を測定する中性子捕獲元素(Sr, Y, Dy)の吸収線も見えており、今後同様の観測を進めて銀河系円盤中の組成の研究を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度にWINERED分光器をマゼラン望遠鏡に設置して観測することに成功し、期待通りの性能が出ていることを確認した。一方、過去の観測で得ていたWINEREDデータを用いた研究では、ライン強度比という手法を用いて有効温度と表面重力をもとめる関係式を構築し(谷口他2021、松永他2021)、それをセファイドに応用することに成功し、さらには可視光スペクトルで化学組成の測定されていたセファイドに対してWINEREDスペクトルで中性子捕獲元素のいくつか(Y, Dy)を含む数種の元素の組成が得られることを示している(Elgueta氏博士論文、2022年、東京大学)。これらによって、本研究計画で行おうとしている観測と研究を進められる目途がついた。2023年6月と10月に行う予定のマゼラン望遠鏡での観測によって、本研究で計画していた観測の多くを遂行できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
2023年6月と10月にマゼラン望遠鏡とWINERED分光器で行う予定の観測については、共同研究者であるAndrew McWilliam博士と緊密に連携しながら準備を進めている。そこで得られるデータでセファイドの化学組成を導出する予定であり、そのための解析ツールなども2022年3月のElgueta氏の博士論文研究で利用したものを使うことができる。その測定結果が得られ次第、セファイドの化学組成が銀河系のどのような化学進化モデルと合うかという検討を進める。また、2024年以降にもマゼラン望遠鏡での観測を継続し、本研究での成果を含めWINEREDによる観測研究を発展させていけるよう検討を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画(2019年からの4年間)ではマゼラン望遠鏡(チリ・ラスカンパナス天文台)での観測を6回程度行う予定であった。しかし、コロナ禍が収まりを見せてきた2022年度になってようやくチリへの出張が可能になり、2022年9月に最初の観測が行えたところである。そこで、2023年度にも2回の観測を行い、本研究を進める計画である。
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