研究課題
本研究では、サンゴ骨格・鍾乳石・二枚貝など付加成長する炭酸塩試料について、高精度年代決定法と高解像度元素・同位体分析法を融合させることにより、過去の環境を長期間かつ高精度で復元することを目的とする。具体的には、炭酸塩試料のウラン-トリウム年代測定法の世界的権威である国立台湾大学のSHEN教授との共同研究を通じて、炭酸塩試料の年代を高精度で決定するとともに、二次イオン質量分析計(NanoSIMS)等を用いて高解像度の微量元素分析を行なうことによって、氷期・間氷期サイクルや地球温暖化に対してアジアモンスーン・エルニーニョ・太平洋十年規模振動がどのように対応してきたか、といった問題の解明を目指す。現在から最終氷期までの情報を記録していると考えられる南大東島産の鍾乳石試料を入手した。国立台湾大学において当該試料のウラン-トリウム年代を測定するとともに、炭酸塩の炭素・酸素の同位体測定を行い、最終氷期の位置を確認することを試みた。その結果、年代と炭素酸素同位体比および色から氷期-間氷期の境界を確認することができた。その後、LA-ICP-MSを用いて当該試料の微量元素を分析し、現在から最終氷期に至る長期間の濃度変動データを得ることに成功した。また研究代表者の佐野がSHEN教授の研究室を訪問し、上述した鍾乳石のデータや今後の研究計画に関する議論を行なった。今後は研究分担者の鹿児島らがSHEN教授の研究室を訪問して、炭酸塩試料の年代測定を実施するように計画を進めている。
2: おおむね順調に進展している
最終氷期を含む現代の鍾乳石試料を入手し、ウラン-トリウム年代および炭素酸素同位体から最終氷期との境界を決定することができた。さらにLA-ICP-MSによる測定を進め、古環境復元に有用な情報が得られた。LA-ICP-MSなどを用いた微量元素測定法とウラン-トリウム年代測定法を組み合わせて炭酸塩試料を分析していくことにより、今後も古環境復元において有用なデータセットを収集していくことが可能である。2019年11月よりSHEN教授の大学院生が日本に滞在し研究を行っている。ただし新型コロナウイルス感染対策のため2月に台湾に帰国してから中断している。さらに3月に日本人研究者数名でSHEN教授の研究室を訪問する予定であったが入国できず中止となった。ただし電子メール等で情報交換は行っており、研究継続に大きな支障はない。
ウラン-トリウム年代測定法を駆使してサンゴ骨格・鍾乳石・二枚貝などの年代を精密に決定しつつ、LA-ICP-MSやNanoSIMSを用いて微量元素・同位体を測定することにより、古環境復元に有用なデータの収集を進める。ウラン-トリウム年代測定は研究分担者の鹿児島らをSHEN教授の研究室に派遣しながら進める。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件)
Geo-Marine Letters
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