研究課題
本研究の目的は、日本側の最先端の高温高圧実験技術と米国側の最先端の弾性波速度測定技術・放射光X線その場観察実験技術を組み合わせて、地球深部物質の高温高圧下での弾性波速度測定実験を無水及び含水条件下で遂行し、地球深部物質の探索を行おうというものである。そしてこの国際共同研究を通じて、更なる強い国際協力関係が構築でき、特に若手研究者へこの協力関係の伝承ができればと考えている。その中で、まず真っ先に日本側で弾性波速度測定実験に耐えうる良質試料合成に取り組んだ。加えて、今まで実施してきた共同研究の成果をいち早くまとめて出版した。特に2015年に申請者らのグループが新規高圧含水相23Å相を発見したが、その安定領域を明らかにした研究を出版した(Cai and Inoue, 2019)。さらにその良質な焼結体の合成に成功し、高温高圧下での弾性波速度測定実験を米国ストニーブルク大学で行った(Cai et al., 2019)。これらの研究に引き続き、phase Dやsuperhydrous phase Bの良質な焼結体の合成にも取り組み、それらの試料を用いて弾性波速度測定実験に取り組んだ。これらの結果については現在解析中である。加えて、今回の国際共同研究強化Bのプロジェクトを通じて、更に派生的に生じた国際共同研究にも広がっている。それらにより本国際共同研究の幅が更に広がっている。詳細については、本年度の研究発表欄を参照されたい。
2: おおむね順調に進展している
弾性波速度測定実験には良質な測定試料合成が必要不可欠である。今年度は実施計画に書いたように、弾性波速度測定に耐えうる試料合成に取り組んだ。高温高圧下での試料合成は愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター設置の川井型マルチアンビル装置を用いて行った。非常に透光性の高い、すなわち焼結度の高い試料合成を行うため、出発試料としてはコンテナレス法(浮遊法)で合成したガラスを用いた。この出発試料作製はSPring-8、 BL04B2設置の装置を用いて行った。今年度は特にAlに富んだブリッジマナイトの良質試料合成に集中した。加えて、予定通り2019年度内に広島大に高圧発生装置が導入され、その装置の立ち上げも行った。合成試料については、X線回折装置、走査型電子顕微鏡、電子線プローブマイクロアナライザー、及び透過型電子顕微鏡においてキャラクタリゼーションを行っている。加えて、今まで実施してきた共同研究の成果をいち早くまとめて出版した。特に2015年に申請者らのグループが新規高圧含水相23Å相を発見したが、その安定領域を明らかにした研究を出版した(Cai and Inoue, 2019)。さらにその良質な焼結体の合成に成功し、高温高圧下での弾性波速度測定実験を米国ストニーブルク大学で行った(Cai et al., 2019)。加えて、今回の国際共同研究強化Bのプロジェクトを通じて、更に派生的に生じた国際共同研究にも広げていけており、本国際共同研究の幅が更に広がっている。このように既に査読付き国際誌への公表論文があり、加えて学会発表でも最新の成果を発表してきており、研究は順調に進んでいると評価する。研究成果の詳細については、本年度の研究発表欄を参照されたい。
今後も弾性波速度測定に耐えうる試料合成を行う。高圧合成実験は、愛媛大学GRC設置の川井型マルチアンビル装置、及び昨年度末広島大学に導入した高圧発生装置を併用して行う。特に広島大学に導入した装置に対しては、そのパフォーマンスを最大限にいかせるように改良していく。これらの研究は、研究代表者の井上と研究分担者である佐藤・川添・柿澤が協力して行う。非常に透光性の高い、すなわち焼結度の高い試料合成を行うため、出発試料としてはコンテナレス法(浮遊法)で合成したガラスを用いる。この出発試料作製はSPring-8のBL04B2設置の装置を用いて行う。この合成は研究代表者の博士後期課程学生であり研究協力者である野田昌道が行う。この手法を用いて、ワズレアイト、リングウッダイト、ブリッジマナイトの良質試料合成を行う。さらに、含水化した試料の合成も試みる。合成に成功した試料においては、X線回折装置、走査型電子顕微鏡、電子線プローブマイクロアナライザー、及び透過型電子顕微鏡においてキャラクタリゼーションを行う。特に、精密粒径観察・組織観察や微小領域の化学組成測定を重点的に遂行する。この分析は研究分担者の安東が主に担当する。しっかりしたキャラクタリゼーションがなされた良質な試料に対しては、高圧下での弾性波速度測定を行う。測定は、その第1人者であるLi教授との国際共同研究としてストニーブルク大学、及び放射光X線その場観察実験は、シカゴ放射光施設のAPS にて、Li教授及びビームラインサイエンティストのWang教授との国際共同研究として行う。また日本においては、 SPring-8のBL04B1ビームラインにおいて、肥後ビームラインサイエンティスト、及び愛媛大学のGreaux助教との共同研究としても推進していく。
新型コロナウイルス感染症対策のため、海外出張が規制されて、当初予定していた米国出張が困難となった。その分が次年度繰越という形で、次年度使用額が生じた。研究としては電子メールで密接なやり取りを行い、国際共同研究を遂行した。今年度の使用計画であるが、新型コロナウイルスの状況が不透明な中、引き続き海外出張自粛が続くように予想される。したがって、日本側が得意とする高圧試料合成に集中し、繰越分はそのために必要な消耗品購入に変更する。弾性波速度測定に耐えうる試料が合成されれば海外の共同研究者に郵送し、測定を開始する。新型コロナウイルスが終息した暁には、日本側研究者も海外に出向き、測定に参加する。それまでは先方とのやりとりは引き続き電子メールベースで行う。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (16件) (うち国際共著 9件、 査読あり 16件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (37件) (うち国際学会 11件、 招待講演 2件) 備考 (2件)
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