研究課題/領域番号 |
19KK0087
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
高垣 直尚 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (00554221)
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研究分担者 |
鈴木 直弥 近畿大学, 理工学部, 教授 (40422985)
松田 景吾 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(地球情報基盤センター), 研究員 (50633880)
大西 領 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(地球情報基盤センター), その他 (30414361)
小森 悟 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (60127082)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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キーワード | 台風 / 風波 / 運動量輸送 / 熱輸送 |
研究実績の概要 |
台風など暴風下における海水面を通しての熱・運動量輸送機構を明らかにし,信頼性の高い輸送モデルを構築することは,台風の強度を正確に見積もるうえで極めて重要である.本研究では,台風シミュレーション水槽を保有するロシアの海外共同研究者と協力し,高風速状態における海水面の砕波機構,および,砕波層を通しての熱・運動量輸送機構を解明し,台風下の強烈な砕波を伴う海水面を通しての熱・運動量輸送モデルを新たに構築することを目的とする.本年度は,主に(1)2019年度に九州大学応用力学研究所の大型風波水槽にて測定された気流や風波データの解析を行った.(2)近畿大学設置の小型風波水槽において運動量収支法の改良を行った.さらに,(3)最新の台風関連および気象予測モデルに関するテストコードの作成を行った.特に,1の結果,ロングフェッチ状態において,水面を通して輸送される運動量輸送量を独立した2つの技法(プロファイル法,運動量収支法)により推定することに成功した.また,2の結果,中風速以上で破砕した水面にかかる運動量輸送量を高精度に推定することに成功した.2021年度には,2で確立した高精度運動量輸送量推定法を用いて,九州大学水槽において運動量輸送量を再測定する.これらの研究実績の一部は,英文誌2報にて発表された.また,2020年5月に開催予定であった国際会議にて4件報告する予定であったものの新型コロナウィルス感染症(COVID19)の影響により学会延期となり,報告機会に恵まれなかった.また,2020年3月,9月にはロシア渡航を行い,現地にて本研究プロジェクトに関する打ち合わせ及び現地での共同実験を行う予定であった.しかし,このロシア渡航もCOVID19の影響により中止することとなった.以上より,2020年度はCOVID19の影響を多分に受けたものの,本年度の研究は概ね想定通りに進展した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は,台風下の水面を通しての熱・運動量輸送機構を解明しモデル化するために,ロシアにおける実験研究・九州大学における実験研究・近畿大学における実験研究の3つの実験研究と,台風予測に関する1つの数値計算研究の合計4つの研究について準備等を進める予定であった.研究1については,2020年3月,9月にロシア渡航を行い,ロシア・応用物理研究所所有の台風シミュレーション水槽における気流分布や風波形状などの基礎データの共同取得を行う予定であった.しかし,新型コロナウィルス感染症(COVID19)の影響により2度のロシア渡航を中止した.代わりに,今後の予定について,ロシア側研究者とのメール打ち合わせを複数回行った.研究2については,2019年度に九州大学応用力学研究所の大型風波水槽にて測定した気流および風波データの解析を行った.ロングフェッチ状態において,水面を通して輸送される運動量輸送量を独立した2つの技法(プロファイル法,運動量収支法)により推定することに成功した.一方で,その推定精度は期待よりも低く,2021年度に再測定する必要性が確認された.研究3については,研究計画通り,風速15m/s以上の条件で,破砕した水面にかかる運動量輸送量を高精度に推定することに成功した.2021年度には,2で確立した高精度運動量輸送量推定法を用いて,九州大学水槽において運動量輸送量を測定することが重要である.4つ目の計算研究に関しては,研究計画通り台風強度を推定する気象モデルに関するテストコードの作成を行った.これらの研究実績の一部は,英文誌2報にて発表された.2020年5月に開催予定であった国際会議にて4件報告する予定であったもののCOVID19の影響により学会延期となった.以上より,2020年度はCOVID19の影響を多分に受けたものの,研究は概ね想定通りに進展した.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度には,ロシアにおける実験研究・九州大学における実験研究・近畿大学における実験研究・台風予測に関する数値計算研究の4つの研究を推進する予定である.研究1においては,2019,2020年度に予定していたロシア渡航を2021年度後半に実施し,ロシア・応用物理研究所所有の台風シミュレーション水槽において気流分布や風波形状などの基礎データの取得を行う予定である.渡航者は研究代表者を含め複数の共同研究者および大学院生を予定している.研究2,3においては,九州大学応用力学研究所の台風シミュレータ水槽を使用して,2020年度に研究3にて確立された高精度運動量輸送量測定手法を使用して,2019年度に実施された運動量輸送量の再測定を実施し,運動量輸送量に及ぼす吹送距離の影響を解明する.測定された運動量輸送量は,京都大学やロシア人共同研究者の台風シミュレータ水槽における値などとの比較解析を行う.研究4においては,台風強度を推定するための数値計算を実施する.運動量輸送モデルとして海面汚染をも考慮した物理モデルを使用する.本計算は地球シミュレータセンタのスーパーコンピュータを用いて並列計算により実施する.なお,研究1,2に関しては,COVID19の影響により国内・国際出張が難しい可能性がある.このような場合にも,ロシア人共同研究者と各国の実験データをベースとし,オンライン打ち合わせなどを通じて,新たな学術論文のための討論を行う.また,近畿大学の水槽の利用をより強力に促進する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度には,複数回のロシア渡航および九州大学への国内出張を計画していたが,新型コロナウィルス感染症(COVID19)の影響によりこれらを取りやめた.このため,2019年度の出張延期分を含め,海外および国内出張費合計220万円を使用しなかった.また,出張先の風波水槽実験のために必要となる消耗品費合計100万円を使用しなかった.さらに,COVID19のために室内実験における計測が滞り,熱線流速計購入可否を判断することが難しかった.そのため,この費用130万円を繰り越した.以上より,合計450万円を次年度へと繰り越しを行うこととした.本繰越金は,次年度にロシア渡航費・国内出張費・流速計購入費・論文印刷費の支払い等に充てる予定である.
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