研究課題
本研究では、約24億年前に起きた大酸化事変 (GOE)に果たした固体地球変動の役割を解明することを目的として、マントルを含めた物質循環を主に硫黄同位体異常や微量元素分析等を用いて追跡する。本年度は西オーストラリア等において野外調査を行う計画であったが、新型コロナウイルスの感染拡大により、海外における野外調査は延期し、西オーストラリア大とのオンラインワークショップを複数回にわたって行い、室内分析結果の進捗をリアルタイムに討議した。 この共同研究により、アパタイト中の硫酸硫黄同位体比を局所分析する手法を開発した(Hammerli et al., in press)。一方、西オーストラリア大で行う予定であった岩石試料の局所同位体分析は遅延が生じているが、すでに採取しているコマチアイトの遷移金属元素濃度や強親鉄性元素濃度測定を実施し、現在データ解析を進めている。特に、全岩の多種硫黄同位体分析の結果、いくつかの太古代試料が小さな負の33S同位体異常を持ち、これがSr, Nd, Pbの同位体比組成と相関することが明らかになった。これにより、太古代コマチアイトの少なくとも一部は、沈み込んだ海洋リソスフェアーの成分を有することが示唆された。一方、硫酸二重置換同位体計測という新たな計測法を確立し、これを太古代・原生代の硫酸塩試料に適用した。その結果、硫酸の34S-18O二重置 換度はGOE前後ではなく、原生代中期をピークとする変動傾向を示すことが判明した。これらの変動要因についての解析を進めている。
4: 遅れている
COVID19の世界的な感染拡大により、海外における野外調査を行うことができず、当初の計画から遅延している。また、西オーストラリア大学に赴いて行う予定であった局所分析も、本年度は実行不可能であったことも遅延理由の一つである。また、これらの成果を挙げることができないことが一因となり、分担者一名が民間企業に就職することとなった。
海外における調査および局所分析は2021年度も困難であることが見込まれるため、計画を変更し、局所分析については国内で行うよう準備を進めている。新たな試料を採取することが困難であるため、現有試料のうち、最も解析の進んでいるジンバブエ、べリングウェー緑色岩帯に産する27億年前のコマチアイトをターゲットして、局所硫黄多種同位体計測を行うとともに、硫黄の挙動に鋭敏なトレーサである遷移金属/強親鉄性元素濃度測定を組み合わせた研究を推進する計画である。これにより、太古代マントルにおける硫黄循環にさらなる制約を与える。また、分担者一名の転出に伴って、別の分担者を新たに一名追加した。
2020年度に予定していた海外での野外調査を2021年度に延期したため
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 10件、 査読あり 10件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
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