研究課題/領域番号 |
19KK0091
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
上野 雄一郎 東京工業大学, 理学院, 教授 (90422542)
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研究分担者 |
石川 晃 東京工業大学, 理学院, 准教授 (20524507)
青木 翔吾 秋田大学, 国際資源学研究科, 助教 (60801967)
青山 慎之介 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 日本学術振興会特別研究員 (50814232) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | GOE / コマチアイト / 同位体異常 |
研究実績の概要 |
本研究では、約24億年前に起きた大酸化事変 (GOE)に果たした固体地球変動の役割を解明することを目的として、マントルを含めた物質循環を主に硫黄同位体異常や微量元素分析等を用いて追跡する。当該年度に計画していた西オーストラリア等における野外調査は、新型コロナウイルスの感染拡大が長期化したことにより再度延期した(2022年度実施予定)。また、海洋研究開発機構で行う予定にしていた岩石試料の局所同位体分析に関しても同様の理由により遅延が生じている。一方、コマチアイトに含まれる硫黄、遷移金属元素、および強親鉄性元素の濃度測定手法の改良に取り組み、確立した手法を現有試料のコマチアイトの中でも特に古い年代(34-35億年前)を示すオーストラリア、ピルバラ地域および南アフリカ、バーバートン地域のコマチアイトに適用した結果、いずれも全岩の強親鉄性元素濃度が低くなる傾向を持ち、これが酸化還元指標となるV/Sc比と相関することが明らかになった。先行研究では、太古代の深部マントルにはレイトベニア物質(後期衝突物質)が供給されにくく、そのため太古代コマチアイトが強親鉄性元素に乏しいと考えられてきたが、本研究結果は、融解時の酸化還元状態がコマチアイトの強親鉄性元濃度変動に大きく寄与している可能性を示唆しており、従来仮説の再考を促すものである。今後より年代の若いコマチアイトの解析を進めることにより、マントルの酸化還元状態の変動要因やGOEとの因果関係についてより詳細に検討することが可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID19の世界的な感染拡大により、海外における野外調査を行うことができず、当初の計画から遅延している。また海洋研究開発機構に赴いて行う予定であった局所分析も、本年度は調整がつかず実行不可能であったことも遅延理由の一つである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、これまで延期を重ねてきた西オーストラリアにおける海外調査を秋頃(10-11月)に実施すべく準備を進めている。また、計画段階で西オーストラリアで実施する予定であった局所分析に関しても、国内(海洋研究開発機構)にて実施する予定で調整がついている。また並行して、現有試料の中でも最も解析の進んでいるジンバブエ、べリングウェー緑色岩帯に産する27億年前のコマチアイトおよび顕生代コロンビアゴルゴナ島産のコマチアイトを主要なターゲットとして、硫黄の挙動に鋭敏なトレーサである遷移金属/強親鉄性元素濃度測定と硫黄同位体変動を組み合わせた研究を推進する計画である。これにより、太古代から現在に至るマントルにおける硫黄循環や酸化還元状態に関してさらなる制約を与える。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の長期化に伴って、オーストラリアで予定していた野外調査を2022年度に延期したことが主な理由である。
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