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2019 年度 実施状況報告書

初期地球時代のプレート沈み込み帯でのマントルー地殻相互作用

研究課題

研究課題/領域番号 19KK0092
研究機関金沢大学

研究代表者

森下 知晃  金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (80334746)

研究分担者 沢田 輝  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (10845100)
谷 健一郎  独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究主幹 (70359206)
研究期間 (年度) 2019-10-07 – 2023-03-31
キーワードカンラン岩 / 花崗岩 / 太鼓代 / ジルコン / テクトニクス / 初期地球 / 大陸
研究実績の概要

太陽系の惑星の中で現在の地球だけが持つ固有の特徴として,プレートテクトニクス・大陸・海の存在がある.この特徴が地球史のいつから存在し,現在とどう違い,なぜ違うのかは地球科学未解明問題である.これまでに申請者らは,西グリーンランド南部地域に産する地球史上最古(38億年前)の超苦鉄質岩(上部マントル物質)とその周囲の変成岩・花崗岩(地殻物質)から,プレートテクトニクス稼働を示唆する沈み込み帯深部環境の記録,および超苦鉄質岩と周囲の地殻物質との物質化学的相互作用の記録が存在しうるという予察的結果を得ている.本研究では,当地域の地質調査と岩石試料への多元素・同位体分析体制を強化し,(1)太古代地質帯の岩石形成温度圧力条件に基づく初期地球のプレート沈み込み帯の実態,(2)初期地球のプレート沈み込み帯深部でのマントル-地殻相互作用の解読による流体/メルトが関与する物質循環と大陸形成過程,(3)世界最古のマントル物質の特徴とその要因を明らかにし,初期地球のプレートテクトニクスと固体地球変遷の解明に貢献する.本年度の実績の概要は以下の通りである
(1)太古代の温度圧力履歴の推定:カンラン岩体中の特殊な鉱物組み合わせを見出し,エクロジャイト相に達する変成条件を記録している岩体があることを明らかにした.また,その後,蛇紋岩化および炭酸塩岩化の影響を強く受けていることを明らかにした
(2)カンラン岩体は周囲の変成岩・花崗岩からの物質供給を強く受けていることを明らかにした.特に,カンラン岩体中にジルコンが含まれていることを明らかにし,カナダ・アルバータ大学との共同研究でこれらのジルコンの酸素同位体比,U-Pb比,Hf同位体比を測定し,それらの起源について検討している.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究計画では,この研究グループにさらに年代測定・化学分析のスペシャリストの沢田(若手)を加えてプロジェクトチームの強化を行うことを目的とした.そのために,化学分析技術に実績のある若手研究者(沢田)がPearson氏の所属先(カナダ・アルバータ)に滞在し,共同研究を行うとしていたが,計画通り実行された.特に,沢田・谷らの調査成果によって,カンラン岩中に年代測定に適した鉱物(ジルコン)を含むものが産することが明らかとなり,ジルコンの年代測定・同位体測定から,カンラン岩―地殻物質の相互作用年代の一つを決定する情報が得られた.
今後の研究展開に必要な野外調査の手配も行った.グリーンランドの調査と岩石試料の日本国への送付にはGEUS(デンマーク・グリーンランド地質調査所)を通じての公式な手続きが必要であり,また野外調査期間が可能な夏期が短いため,ヘリコプター(Air Greenland社を予定)の迅速な手配を行った.調査道具の大型必需品(大型ハンマー,食事用大型テント,燃料など)はNuukにあるデンマーク・グリーンランド地質調査所(GEUS)の岩石・資源部室部長の協力を受けて調達した.これらの交渉は海外研究者(Szilas博士)が担当し,代表者(森下)が補助を行って行われたが,今年度のCOVIDの影響は免れないであろう

今後の研究の推進方策

38億年前地質帯に関して, 2019年度7-8月(森下・Szilas・Pearson)に追加調査を行う予定であったが,COVIDの影響で調査の再計画を行う.
*岩石の温度圧力履歴推定に必要な鉱物・全岩化学組成分析 鉱物の主要・微量元素は金沢大学設置の電子線マイクロアナライザー(EPMA)とレーザー照射による局所サンプリングー質量分析計(LA-ICPMS)システムで行う.全岩化学組成分析は分担者(谷)の蛍光X線分析装置(XRF)と上記の金沢大学LA-ICPMS装置を使用して測定する.
*年代測定1 ジルコンのウラン-鉛同位体測定 共同研究者(谷)の国立科学博物館で年代測定用ジルコンの年代測定準備が整備されており,測定は海洋開発研究機構のLA-ICPMSを使用.分析誤差の少ない年代値が必要になった場合,国立極地研究所のSHRIMPを使用して測定を行う.
*年代測定2 超苦鉄質岩石(カンラン岩)のレニウムーオスミウム,プラチナムーオスミウム同位体比 超苦鉄質岩石からは年代値を得ることは難しい.本研究では,海外共同研究者のPearson教授の表面電離型質量分析装置(TIMS)を用いてレニウムーオスミウム, プラチナムーオスミウム同位体比を測定してカンラン岩の年代測定を行う.
*マントルー地殻物質相互作用の検証 多同位体分析による包括的検討(海外共同研究者 Pearson教授の分析設備を利用 年代測定1と同じジルコンを用いてLaser照射局所同位体測定でLu-Hf, Pd, Sm-Nd同位体比を測定する.これらのデータから,ジルコンの熱水変質履歴(つまり地殻条件の環境記録となる)を解読する.炭酸塩鉱物の酸素・炭素同位体比を二次イオン質量分析法で分析し,炭酸塩鉱物を形成した流体の組成・起源を明らかにする.これらの同位体に加え,鉱物や全岩でのSr-Nd同位体比を測定する.

次年度使用額が生じた理由

繰越: 海外での滞在型研究の予定がCOVID19によって一部できなかったため.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] University of Copenhagen(デンマーク)

    • 国名
      デンマーク
    • 外国機関名
      University of Copenhagen
  • [国際共同研究] University of Alberta(カナダ)

    • 国名
      カナダ
    • 外国機関名
      University of Alberta
  • [国際共同研究] University of Cologne(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      University of Cologne
  • [雑誌論文] Ruthenium isotope vestige of Earth’s pre-late-veneer mantle preserved in Archaean rocks2020

    • 著者名/発表者名
      Fischer-G?dde Mario、Elfers Bo-Magnus、M?nker Carsten、Szilas Kristoffer、Maier Wolfgang D.、Messling Nils、Morishita Tomoaki、Van Kranendonk Martin、Smithies Hugh
    • 雑誌名

      Nature

      巻: 579 ページ: 240~244

    • DOI

      10.1038/s41586-020-2069-3

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Age constraints on the Palaeoproterozoic Lomagundi?Jatuli Event in Zimbabwe: Zircon geochronology of the Magondi Supergroup2019

    • 著者名/発表者名
      Sawada Hikaru、Mugandani Ernest Tafumanei、Sato Tomohiko、Sawaki Yusuke、Sakata Shuhei、Isozaki Yukio、Maruyama Shigenori
    • 雑誌名

      Terra Nova

      巻: 31 ページ: 438~444

    • DOI

      10.1111/ter.12407

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Metasomatic and metamorphic overprints on the Archean Ulamertoq ultramafic body in the southern West Greenland2019

    • 著者名/発表者名
      Nishio, I., Morishita, T., Szilas, K., Tamura, A., Guotana, J.-M., Tani, K., Harigane, Y., Pearson, G.
    • 学会等名
      AGU Fall Meeting
    • 国際学会
  • [備考] 38億年前の岩石に保存されたルテニウム同位体から地球の化学進化の過程を解明

    • URL

      https://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/77050

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公開日: 2021-01-27  

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