研究実績の概要 |
本研究は30-38億年前(太古代)に形成された地質帯中の超苦鉄質岩石およびそれに伴う岩石について着目し,その起源及び履歴を明らかにすることで初期地球のテクトニクス環境について解明することを目的として行った。 形成年代及び変成・交代作用年代:先行研究では40億年という年代が報告されている岩体について精査を行った。超苦鉄質岩石および周囲の変成岩に伴うジルコンについてU-Pb年代,Hf同位体比,酸素同位体比を測定した結果をもとに,超苦鉄質岩石が形成された年代と変成・交代作用年代およびそれに伴う地球化学的改変について議論を行った(Sawada, Morishita et al., 2023 Geoscience Frontiers)。超苦鉄質岩石中のジルコンは超苦鉄質岩石が形成された時にできた結晶であるが,(1)30億年前に形成された,(2)30億年前に変成・交代作用によって年代値が改変された可能性を指摘した。また,Pt-Os同位体年代の測定も行い,これらの再検討結果は,本岩体の形成が30億年程度であったことを示唆する(論文修正中)。 グリーンランド太古代地質帯における超苦鉄質マグマの活動の証拠:これまでの我々の研究成果によって本地域の超苦鉄質岩石が複数の交代作用により大きく鉱物組成・化学組成変化を受けたことが明らかになっている(Nishio et al., 2022 Jour. Petrol.)。これらの成果をもとに,最も古い時代の記録が残っている可能性のある岩石相に着目し,現代地球の火山活動によって形成された類似岩石相との統計学的な検討を行った。その結果,従来太古代地質帯の中でもグリーンランドからはほとんど報告されてなかった超苦鉄質火成活動が記録されている可能性を指摘した。この結果は,太古代の熱史を解明する際に物質科学的情報から高温環境が必要であったことを示唆する(論文投稿中)。
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