研究課題/領域番号 |
19KK0101
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福島 誉史 東北大学, 工学研究科, 准教授 (10374969)
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研究分担者 |
マリアッパン ムルゲサン 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 学術研究員 (10509699)
木野 久志 東北大学, 医工学研究科, 特任准教授 (10633406)
清山 浩司 長崎総合科学大学, 工学研究科, 教授 (60412722)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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キーワード | 応力制御 / FHE / 人工網膜 / 三次元実装 / TSV |
研究実績の概要 |
大きなチップの機能ブロックを分割した小型のチップを柔軟な樹脂に埋めこんで平坦化した新しい高集積フレキシブルシステムの作製技術の確立を目指し、分子レベル、材料レベル、システムレベルの視点から見たマルチスケールの応力解析を目的としている。鍵となるのはポリジメチルシロキサン(PDMS)と呼ばれる生体適合性の高い樹脂中に小型化したチップ(チップレット)を分散して埋め込み、ウエハレベルパッケージングで柔軟性を付与させる集積化手法にある。エラストマーに内蔵されたチップと多層配線の境界が最も強い応力を受けるため、そこの応力緩和がシステムの実証には必要不可欠である。 小さい曲げ半径(1mm以下)と高い繰り返し曲げ耐性(10,000回以上)を有する高集積フレキシブル・ハイブリッド・エレクトロニクス(FHE)の作製を目標とし、マルチスケール応力エンジニアリングを援用して高い信頼性を実現可能なデザインルールを導くことを第一の目的とする。SPring-8やJ-PARC(大強度陽子加速器施設)を利用し、応力緩衝層と配線の界面を対象に独自の2つの解析を行う。1つは、曲げ応力により誘発される金属配線の格子定数変化を曲率の異なる試験片からμXRD(微小部X線回折)で測定する。もう1つは、応力緩衝層を構成する高分子の絡み合い密度の低下から極小クラックを発生する過程で生じる炭素原子密度の減少と配向度をX線CTとμSANS(中性子光小角散乱)により検出する。ひずみセンサやμラマン分光も併用し、高集積FHEの破断につながる大きな塑性・脆性変形を予測する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の応力緩衝層(SBL: Stress Buffer Layer)の構造設計では、薄膜の厚さと弾性率が支配する応力中立軸の制御により、曲げ耐性に優れたフレキシブルシステムの設計の有効性を示した。また、2年目には、大型放射光施設SPring-8のμXRD(微小部X線回折)により、曲げ試験下のファンアウトAu配線にかかる応力を解析し、微小曲げ試験時にかかる応力を格子状数の変化から算出した。また、有限要素法でシミュレーションした結果で得られたフォン・ミーゼス応力の値とよく一致する結果を得た。3年目には、主に表面保護膜を使った応力中立軸の制御に取り組んだ。厚さ7umのパリレン薄膜を最上層のファンアウト配線上に形成することによって、テンションフリーの曲げ試験機を用いた繰り返し曲げ耐性を高められることを実験的に証明し、システムレベルの高い信頼性を得ることができた。曲げ半径5mm、繰り返し曲げ回数1000回に耐えることができたため、例えば、機械的強度の観点から、提案するマルチチップ人工網膜システムでの応用が潜在的には可能であることを示すことができた。一方、UCLAとの連携に関しては、現地で議論しながら進めることがCOVID-19の影響でできなかったが、当該年度である4年目には、ようやく渡米することができ、全体のシステム設計を進めることができた。体内埋込コイルのサイズは、コイル部の直径Dと厚さTで決まるため、体内モジュールに電力監視機能を設けて受電と消費電力の情報を眼球外モジュールにフィードバックして最適な需給エネルギに保つ無線給電の電力制御機能を設計した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、これまでに研究してきたマルチレベルの応力解析とシステム集積化技術を組み合わせ、マルチダイレベルの3D-IC作製技術基盤を構築し、人工網膜として機能するシステムを試作する。そのための、マルチダイ一括実装と位置合わせ精度の評価、TSV形成の歩留り向上、接合や絶縁膜堆積にかかわる機械的熱応力の制御を中心に原理の実証を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響で渡米するのが遅れ、その分、研究計画も遅れたため、研究期間を約半年間延期し、最終年度にデバイスシステムを作製して、技術を実証するための費用として次年度に繰り越した。
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