研究分担者 |
本多 周太 関西大学, システム理工学部, 准教授 (00402553)
中堂 博之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (30455282)
柳原 英人 筑波大学, 数理物質系, 教授 (50302386) [辞退]
奥村 宏典 筑波大学, 数理物質系, 助教 (80756750)
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研究実績の概要 |
フェリ磁性体Mn4Nは垂直磁気異方性を示し、また、異方性エネルギーが大きいため、スピントロニクス材料として注目して研究を進め、以下の結果を得た。 1. スピン軌道トルクを利用するには極薄膜Mn4N膜を形成する必要がある。堆積時のMnおよび窒素の供給量を精密に制御することで、膜厚約4nmのMn4N膜のエピタキシャル成長に初めて成功した。従来は、10nm以下の膜厚のMn4Nの報告例はなかった。 2. スピンHall効果を利用できるよう重金属にPtを選び、Mn4N膜をPt/SrTiO3(001)基板へのエピタキシャル成長に成功した。 3. 非磁性元素であるCuを添加した(Mn,Cu)4N膜が、室温で磁化補償を示すことを、あるCu組成付近で保磁力が拡大し、また、飽和磁化が減少することから明らかにした。また、X線磁気円二色性の測定から、磁化補償組成の前後でCuの磁気モーメントが反転することが明らかになった。一方、Mnの磁気モーメントについては、磁化補償を示すCoおよびNi添加Mn4Nとは異なり、ノンコリニアな磁気構造になっていると考えられる。同様な結果が、他の非磁性不純物(In, Ga, Au)を添加した試料でも起こっている。よって、これらの不純物を添加したMn4Nについても、室温で磁化補償組成が存在する可能性が高い。 4. Mn4N/(Mn,Cu)4Nヘテロ接合を形成し、断面TEM観察からヘテロ界面でのCuの拡散が無視できるほど小さいこと、さらに、2層間で反強磁性的な磁気結合が生じることを、表面敏感な測定であるKerr効果顕微鏡、X線磁気円二色性、ホール効果測定、磁化測定で明らかにした。Mn4Nベースの2層構造による反強磁性結合の実証は、これが初めてである。
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