研究課題/領域番号 |
19KK0109
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
椋木 俊文 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (30423651)
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研究分担者 |
大谷 順 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (30203821)
才ノ木 敦士 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工, 准教授 (70802049)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | オイルサンド / 多孔質材料 / 高粘性流体 / X線CT画像解析 / 移流拡散解析 |
研究実績の概要 |
本研究では,VAPEX法によるビチューメン回収問題を対象とした間隙内における高粘性流体の移流拡散現象の解明を目的に,複数の間隙構造内における水飴の移流拡散解析を行い,さらにVAPEX法によるビチューメン回収を模擬したマクロな解析も行った.また,これら解析のために必要な物性値は拡散係数,粘性係数,密度でありこれらの測定のための実験を行った.その結果、(1)濃度と粘性係数,濃度と密度の関係について実験で測定し,それら実測値から高粘性流体の移流拡散現象の再現解析を行うことができた.(2)拡散係数が粘性変化に伴い変化していく場合,拡散層の厚さが濃度勾配が急になるほど薄くなる.また間隙構造中での拡散の場合,小さな間隙での一時的な高濃度箇所の残留など流動性が低下し,より構造の影響を受けやすくなる.(3)間隙構造として部分的に粒子径が小さいなどで流路数が多いところがあるとその部分での対流が長期間維持されやすく,溶解速度の上昇につながることが分かった。(4) 間隙径は流入のしやすさ,対流現象のスケールに影響を及ぼし,間隙径がほかの箇所に比べて小さいと溶解が遅れてしまうことが分かった。(5)流路が大きいほど対流の流速は大きくなり,スケールも大きくなるため溶解速度の上昇につながる.(6)力が自重のみの高粘性流体の移流拡散現象の場合配向性よりも間隙径の影響のほうが大きい。(7)VAPEX法における坑井間距離はブレイクスルーまでの期間に影響し,注入条件により最適な値が求められるが,埋蔵深度や注入条件に比べるとそこまで回収効率に影響を与えない。(8)VAPEX法における埋蔵深度は生産井への流路幅やチャンバーの拡大しやすさに影響を与えて,深度が高いほど,規模が小さくなる.(9)VAPEX法における注入条件はブレイクスルーまでの期間や回収濃度に影響し,回収濃度が平衡濃度に近い程効率が良いと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
共同研究相手とは、特に数値解析のことで議論をしたが、実験装置の試作については停滞していた。このことについて、基礎実験を改めてやり直し、供試体のサイズ、試料の粒度分布、高粘性流体の材料選定を再度見直し、令和3年度下半期にようやくめどがついたため、現在設計、製作を開始した(完成は令和4年度6月)。 本研究では、希少材料であるオイルサンドを使った実験を繰り返し実施することができないことから、ビチューメンのモデル材料として粘性がほぼ同等の値を示すシロップを適用し、拡散実験とそれをモデル化した移流拡散解析を実施した。ここでは、濃度の変化に伴う粘性変化に着目し、その関係を明らかにするとともに、Wilke-Changの式から粘性と拡散係数の関係式を利用して、濃度変化に伴う粘性経緯数の変化を拡散係数の変化に組み込むモデルを提案した。また、X線CTを用いて砂の間隙構造を抽出し、その幾何学構造を用いて、間隙な浸透をナビストークス方程式を用いて流速を求め、それを移流拡散方程式の連成させることで、多孔質体内における高粘性流体の輸送現象を再現する数値解析を実施した。実験が想定よりも遅れていることから、やや遅れているという評価をしているものの、数値解析に関しては、高粘性流体が溶媒中への拡散現象により急激に粘性が低下し、濃度変化が生じ始める現象をとらえらていることが令和3年度の研究の大きな進捗と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
コロナウィルス感染拡大の影響もあり、実験装置の試作が計画通りに進められない状況を鑑み、数値解析により高粘性流体の流動挙動を評価する研究を先行させることにした。この間に、実験装置製作のための基礎実験を繰り返し、令和3年度末にプロトタイプ試験機の製作のめどが立ったため、令和4年度は最終年度となるが、この実験装置を上半期で製作し、その実験結果を画像解析していく。今年度は、特に実験を精力的に進め、先行した数値モデルとの比較検証を行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的コロナウィルス感染拡大の影響で共同研究先のロックダウンが続き、しばらくコミュニケーションが取れない時期が続いた。また出張旅費を全く消化していないため、その予算を先送りする必要がある。加えて実験装置の開発に関する具体的な議論がスムーズにできず、また当時の自分の愛でだけではいくつか懸念事項もあったため、装置の開発を延期した。2021年度の旅費と実験装置の開発費を確保するため、2022年度執行計画に予算を計上している。
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