研究課題/領域番号 |
19KK0111
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
上北 恭史 筑波大学, 芸術系, 教授 (00232736)
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研究分担者 |
藤田 香織 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20322349)
マルティネス アレハンドロ 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 助教 (50807815)
石川 達也 北海道大学, 工学研究院, 教授 (60359479)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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キーワード | ウクライナ / 木造教会堂 / 校倉造 / ポテリッチ / 劣化 / 凍結 / 氷河 / モニタリング |
研究実績の概要 |
ウクライナの西部のリヴィウ県およびポーランド東部のサヌク県などにはカルパティア地方に伝わる伝統的な木造教会堂が多く残る。2013年にはウクライナとポーランドの共同申請で「ポーランドとウクライナのカルパティア地方の木造教会群」が世界遺産になっている。木造教会堂は村の居住者たちの教会堂であり、村はずれの小高い丘の上などに建てられていることが多い。そして教会堂として利用するとともに伝統的な修理方法に従って維持されてきた。しかしウクライナではソビエト連邦時代に木造教会堂を維持する伝統的工法が失われたこともあり、修理が必要な木造教会堂が増えている。 ウクライナのリヴィウ県のポテリッチ村に残る聖神降臨聖堂(Potelych-Tserkva of the Descent of the Holy Spirit)は西側の池に面した斜面に建つが、現在斜面の下側に向かって傾斜しており、内部に補強のフレームを入れて維持している。この教会堂は16世紀に建設されたといわれており、現在まで大きな修理は行われていない。本研究では毎冬凍結する地面が春に融解することにより耐力を失い、教会堂の土台の変形をもたらすのではないかと推測した。そこでポテリッチの教会堂を対象に、ボーリングによる土壌調査を実施した。 教会堂の斜面の上部と下部の2か所に深さ10メートルのボーリングを調査会社に依頼し、コア貫調査を行った。またそのコアの土壌分析を行った。その結果、地表面から数十センチの堆積表土があるものの、深さ10メートルまでは地層はなく、均一な砂の土壌であることが確認できた。ポーランド東部とウクライナ西部はカルパティア山脈の北西の端部に位置するが、この辺りはもともと氷河期に氷河が削った砂が堆積した土壌であり、粘土層などの地層がない。そのため地層のすべり面は確認できず、地滑りの挙動は把握できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2019年に始まったコロナ感染症のため外国渡航ができなくなり、ウクライナにおける調査が不可能になった。また2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻のためウクライナへの渡航ができなくなった。そのため研究チームはウクライナの現地の渡航ができない状態が続いたため、ウクライナの土壌調査会社に地質調査を依頼して調査結果を得ることができた。しかしこれ以上の土壌の状態を確認するためには、土壌に傾斜計などのモニタリング装置で観測するしかなく、ウクライナへの入国ができない状態ではモニタリングを実施できない。そのため気候や土壌の状態が似ており、同様の木造教会堂が残るポーランドで土壌モニタリングをするように計画を修正した。
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今後の研究の推進方策 |
国際共同研究の海外共同研究者の協力により、ポーランド東部に残る正教の木造教会堂に調査対象地を変更してモニタリングを進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症とウクライナ侵攻のために当初計画の初期部分の調査しか実施できていない。調査対象地をウクライナからポーランドに残る木造教会堂に変更し、土壌モニタリングを実施する予定である。
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