研究課題/領域番号 |
19KK0112
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
大氏 正嗣 富山大学, 学術研究部芸術文化学系, 教授 (70709716)
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研究分担者 |
横山 天心 富山大学, 学術研究部芸術文化学系, 准教授 (40447652)
籔谷 祐介 富山大学, 学術研究部芸術文化学系, 講師 (40730825)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | 組積造 / 目地 / 赤土 / 岩塩 / 石灰 / SEM / XRD |
研究実績の概要 |
R3年度もネパールへの渡航ができなかったため、日本国内において赤土と岩塩の反応について条件を変更して実験を行った。実験に際し、以下のようにパラメータを変えている。まずヒマラヤ岩塩以外の要因を確認するため、日本のスーパー等で販売している食塩を使用した場合、次にNaClを用いた場合、更にKClを用いた場合、および赤土の種類を変えた場合について検証を行った。 結果として、市場流通している食塩はヒマラヤ岩塩と大きく変わらない性能であることがわかった。元々岩塩が海水を組成としていることから、現在販売されている食塩とほぼ変わらないため予想通りの結果であった。一方、NaClやKClを添加した場合にも若干の強度向上効果がみられたが、岩塩や食塩ほどではなかった。これは、NaClやKClが強度向上の主要因ではないことを意味する。これまでも、MgClやFe等の元素を用いた場合にも同様の傾向であったため、岩塩中の特定元素が要因と考えるのは難しくなった。また、赤土として従来の茨城産以外に熊本産および沖縄産のものを使用したが、土の種類により圧縮強度が大きく変わることがわかった。また、岩塩の添加により強度向上がみられるものの、これも土の種類によって違いが出ることが分かった。 添加物による検証とは別に、顕微鏡による組成分析(SEM断面観察)および反応により生成した結晶をXRD定性分析により観察した。この分析結果から特定の結晶構造が強度上昇に関与していることは見いだせず、むしろ粒子間隙が狭まることから改良土の密度が向上し、これが改良土の強度向上に結びついている可能性が高いことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ感染症により、2019年度末よりネパールへの渡航ができない状況が続いており、現地土を用いた実験が全く実施できていないことが理由である。ただ、日本国内の赤土を用いた代替実験ではあるが、赤土の密度向上要因に新たな可能性が見いだせたため、これまでに発表や報告がされていない新たな強度上昇要因を発見できた。
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今後の研究の推進方策 |
R3年度に、これまでの研究における推測とは異なる改良土の効果が類推できた。R4年度には国内で密度向上に関与する要因を検証すると共に、ネパールへの渡航を再度試みて、人脈の再構築と共に、ネパールの土を用いた実験を推し進めていく。また、交流が途絶えた状態になっているが、ユネスコとのカトマンズ事務所と再度協議を行い、歴史的組積造建築物の修復に関する共同研究に関する調印を進める予定である。懸念事項としては、ネパールへの渡航に関する障害の状況と、ネパール国内での研究推進に対する制約がどの程度となるかであるが、これは情報収集を行いながら慎重に進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症のため、2019年12月以降ネパールへの渡航ができていない。そのため、現地への旅費および現地で活動する経費の執行が全く進んでいない。R4年度は、秋以降にネパール渡航を計画している。2年以上のブランクがあるため、当面は再度の関係構築を図り、その後日本での研究成果を反映させるべく、現地研究者と共に遅れている研究計画を進めていく。
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