研究課題/領域番号 |
19KK0118
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川池 健司 京都大学, 防災研究所, 准教授 (10346934)
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研究分担者 |
中川 一 京都大学, 防災研究所, 教授 (80144393)
藤原 拓 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (10314981)
張 浩 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 准教授 (90452325)
橋本 雅和 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (80814649)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | 洪水災害 / 河岸侵食 / 水制工 / バンダル / 水質汚濁 |
研究実績の概要 |
バングラデシュSirajganj郡ジャムナ川沿いに設置されたバンダル型水制工周辺の地形変動に関する現地調査データを整理し,洪水時におけるバンダル型水制の流失原因分析を行った.河川の地形変動に順応し,数多くの急流河川で有効性が確認された日本の伝統的河川工法である聖牛型水制に関する文献を収集し,洪水に弱いバンダル型水制の改良に関する検討を始めた.また,高知県国分川に設置された水制群を対象とし,平水時及び洪水時における農業排水が河川水制群周辺の流れに与える影響を数値シミュレーションにより検討した.上記のような河床地形の変動予測を精度良く行うための,3次元数値解析モデルを構築し,浮遊砂が卓越する流れ場における河床変動の実験結果を精度よく再現できることを確認した. 農村地域における水質汚濁の研究に関しては,対象フィールドを首都ダッカからアクセスの良いメグナ川下流地域を新たに選定した.当該地域における水環境問題に関する文献調査を行った.また,洪水氾濫および物質輸送解析を行い,産業地域が浸水することによる有毒物質の推定拡散域を可視化した.さらに,氾濫水の地下への浸透の考慮が物質輸送解析結果へ及ぼす影響を評価した. 高度処理を採用している高知県内の下水処理場の水質調査を行った結果,流入水の生物化学的酸素要求量,化学的酸素要求量は各々237 mg/Lおよび403 mg/Lであったのに対して放流水では1.9 mg/Lおよび8.5 mg/であり,各々99%、98%の除去率が確認された.また,流入水および放流水のアンモニア性窒素濃度は各々27.9 mg/Lおよび0.2 mg/Lであり,99%の除去率が確認された.これらのデータは,調査当日の流入水量と下水道共用人口のデータと合わせることにより,下水処理場への流入負荷原単位算定のための基礎資料として活用されるとともに,日本における下水処理場の処理効率をバングラデシュでの処理効率と比較検討するうえでの基礎資料となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により,バングラデシュを訪問することができなかったことに加え,現地共同研究者も国内の現地に赴くことができない状況が続いている.日本国内で実施できる研究として,オンライン会議での打ち合わせ,文献調査,3次元数値解析モデルの構築などを進め,一定の成果を得ることはできた.しかし,現地データが入手できないことから,研究の進捗には遅れをきたしている.
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今後の研究の推進方策 |
引き続きオンライン会議などを活用してバングラデシュ側の共同研究者とも議論しながら,研究を進める. 対象となる農村の河岸侵食の進んでいる地域では,水制周辺の地形や流況を詳細に計測し,数値解析によって水制の効果と最適な設置について引き続き検討する. また,メグナ川下流域の洪水氾濫と有害物質の拡散について研究を進める.具体的には,洪水氾濫数値解析の結果検証,有害物質ポイントソースの情報整理,周辺地域の現地水質調査を現地共同研究者と分担して行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により,当初予定していたバングラデシュへの渡航ならびに現地調査が不可能となったため,次年度使用額が生じた.2021年度において,渡航が再開できるようになるとともに,できるだけ速やかに渡航・現地調査を実施して使用する予定である.
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