研究課題/領域番号 |
19KK0131
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松本 卓也 大阪大学, 理学研究科, 教授 (50229556)
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研究分担者 |
葛西 誠也 北海道大学, 量子集積エレクトロニクス研究センター, 教授 (30312383)
赤井 恵 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (50437373)
谷 洋介 大阪大学, 理学研究科, 助教 (00769383)
玉木 孝 京都大学, 工学研究科, 研究員 (90815490)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | 分子ネットワーク / ナノ物質 / 神経型情報処理 / リザバー計算 / 確率共鳴 |
研究実績の概要 |
コロナ禍のため、計画していた谷助教のTwente大学での研究活動を始め、研究代表者、共同研究者の渡航や共同研究先からの訪日などの計画は全てキャンセルとなった。国内での研究打ち合わせもリモートで行うこととし、本研究のメンバーそれぞれの所属における共同研究を進めることにした。 前年度までにTwente大学のWiel教授とともに進めてきたポリアニリンネットワークをリザバー計算に適用することを試みた。非線形性とヒステリシス特性を含む16電極のネットワークデバイスを構築し、正弦波入力による三角波、方形波、二倍高調波の出力に成功した。さらに、音声認識を行い、標準音声信号を用いた実験で、98%を超える音声認識率の獲得に成功した。この研究成果に関して、Wiel教授と松本との間で、複数回の検討を重ね、国際共著論文を投稿した。 一方、共同研究者の赤井は、リザバー計算における非線形効果について理論的なモデル計算を行った。非線形電流-電圧特性を持つ物質ネットワークにフィードバック系を組み合わせた物理リザバーの動作特性について解析を行った。音声認識において、微粒子などを用いたで安定かつ立ち上がり電圧が設定可能な物質系の有用性が明らかになった。 以上の研究をもとに、二次元ネットワーク型電極に微粒子をランダムに吸着し、時間的な安定性と吸着微粒子数、吸着構造の不均一から生じる多様な電流-電圧特性が両立した多極デバイスを構築に着手した。次年度はこのデバイスを用いてリザバー計算を実行する。 分子ネットワーク内の電荷を実時間で追跡し、物理リザバーの動作状態を解析するための時間分解静電気力顕微鏡の開発も継続して行い、リザバー動作を実現したポリアニリンにおける電荷の時間分解ナノスケールイメージングにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
分子ネットワークを用いたリザバー計算による音声認識に成功し、共同研究先との国際共著論文を投稿した。微粒子を用いた非線形デバイスで得た電流-電圧特性をもとに、リザバー計算のシミュレーションを行い、優れた特性を持つと期待できることを明らかにした。すでに次のステップである二次元ネットワーク化に向けた微細加工電極の作成を開始するなど、当初の予定よりも早いペースで成果が上がっている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度もコロナ禍の状況改善の見込みが立たないため、国際共同研究はZoomとデータのやり取りにより進める。松本グループで、本課題の関連研究で学位をを取得して、九州工業大学の助教に着任した宇佐美雄生を共同研究者に加えて、本研究をさらに強力に推進する予定である。2021年度は微粒子ネットワークを用いたリザバー計算に注力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により出張が出来ないため、来年度の出張旅費のために未使用額を残した。コロナ収束後のオランダ、Twente大学への旅費に充てる。
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