研究課題/領域番号 |
19KK0133
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
簡 梅芳 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (20533186)
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研究分担者 |
菅原 一輝 成蹊大学, 理工学部, 研究員 (60792405)
久保田 健吾 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (80455807)
飯塚 淳 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (70451862)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | 合成生物学 / 生物濃縮 / レアメタル / ニッケル / 微生物工学 |
研究実績の概要 |
2019年末からコロナウィルスによる感染症の世界的流行により、人的交流が強く規制され、本研究が計画した技術取得・技術移転のための研究代表者の簡と学生の台湾渡航がいまだに実施できていない。そのため、まず日本国内にて、金属応答性のある生物機能の探索と、既存の遺伝子工学手法による金属吸着微生物の構築を継続した。 カドミウムの超蓄積植物であるハクサンハタザオ(Arabidopsis halleri ssp. gemmifera)の持つ重金属のトランスポーター遺伝子HMA4と鉄イオンのトランスポーター遺伝子IRT3のカドミウムと亜鉛イオンに対する応答性を調査した。ハクサンハタザオの根において、HMA4はカドミウムと亜鉛に応答して転写量が増加し、一方IRT3は恒常的に転写することを確認した。これらの遺伝子発現制御の情報は、生物学的金属回収微生物の構築に使用する機能遺伝子の選択に知見を提供した。その他、レアメタルのセレンを含有する環境試料を採取でき、その試料からセレン回収に資する微生物の集積培養を開始した。 一方、インターネットを通じた台湾との交流を継続し、今年度は研究協力者の黄先生に招聘され、オンライン形式で国立中興大学生命科学科にてレクチャーを行い、また生命科学院の院長の陳先生に招かれ、台湾でハイブリッド形式で開催された国際会議にで招待講演を行った(オンライン講演)。演題として、前者は生物機能の解明から生物学的環境技術の開発までの道のり、後者は生物工学手法による金属資源回収の研究および持続可能な金属資源の利用について紹介した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2019年末から新型コロナウィルスによる感染症が世界的に広がり始めたことにより、最初は台湾側が外国人に入国規制を強化し、そのため2020年度上半期に予定していた、日本から台湾への学生・研究人員の派遣ができなくなった。また、その後日本の外国人に対する入国制限・再入国制限が強化され、台湾側の共同研究者を日本に招聘するシンポジウムの開催も延期せざるを得なかった。 上記の理由で、2020年度、2021年度共に、予定していた台湾・日本間の人材交流およびこの交流により可能になる合成生物学技術の台湾から日本への技術転移ができなくなっている。そのため、本研究で計画していた金属吸着微生物の作製が遅れている。2020年度、2021年度共に数ヶ月間、実験補佐を雇用して、微生物の組換え実験を継続してきたが、まだ途中で、構築の成功まで達していない現状であった。台湾側の技術提供を要し、両国の人材交流を訴える本研究は、人材や生物試料の両国間の行き来なしには研究課題の遂行が困難と言わざるを得ない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染症による国際的な旅行規制はの緩和傾向が見えるものの、感染状況により変動するので、現状としては渡航の予定を立てることが難しいため、当面では日本側において、昨年度に引き続き金属吸着遺伝子の取得および酵母への導入手法の検討を継続する。調査により入手可能な遺伝子は、PCRにより増幅して入手するか、企業が提供する合成遺伝子のサービスを利用して合成して入手する。具体的なターゲットとして、これまでのモリブデンのほか、レアメタルではニッケル、コバルト、セレンや、ゴールド、プラチナなどの貴金属をターゲットとして調査を行う。 入手した遺伝子を、①日本において、既存の構築手法にて取り組む、②台湾中興大学生命科学研究科の協力研究者の黄先生の承諾を得て、日本から遺伝子情報およびデザインについて相談し、台湾にて遺伝子の合成または融合遺伝子の構築を協力する。出来上がった遺伝子構築を、生物試料譲渡契約(MTA)を締結した上、日本に輸送し、日本側にて形質転換およびその後の性能評価を行う、との対応を考える。 生物試料や研究人員の交流を必要とするが、試料郵送の規制や人員移動の規制を確認しながら、それに合わせた対応をとる。理想としては今年度中に規制の緩和がされれば、直ちに計画した研究を再開し、遅れた進度を取り戻すことができると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、研究期間中、国際シンポジウムの開催を予定していたが、コロナウィルスによる感染症の世界的流行のため、2020年度、2021年度共に開催に至らなかった。その開催費用として、人的費用(旅費)を約120万円、会場・その他費用30万円で合計150万円が未支出のままだった。また、本研究が計画していた代表者の簡と東北大学の院生の台湾派遣(2人*二ヶ月)も実現できず、予定した旅費・滞在費として2人*45万円=90万円、研究に使用する試薬・消耗品費・分析費を200万円、試料の国際郵送(日本・台湾往復)を20万円で合計310万円の執行が遅れた。備品として、台湾にて作製した酵母の培養に新たに恒温振とう培養器(90万円)を購入する予定だったが、上記酵母の作製が遅れたため、備品購入の執行も遅れた。 使用計画として、できれば2022年度に日本から代表者の簡または学生を派遣(1人*2ヶ月間、または2人*一ヶ月間)し、遅れた研究予定を取り戻す。合わせて試料の国際郵送や試薬、備品の購入も発生するため、その費用の執行を予定する。また、台湾側の研究協力者の先生を日本に招聘するか、オンラインにて国際シンポジウムを開催し、開催に必要な設備を整う費用に当たる。
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