研究課題/領域番号 |
19KK0133
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
簡 梅芳 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (20533186)
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研究分担者 |
菅原 一輝 北九州市立大学, 国際環境工学部, 講師 (60792405)
久保田 健吾 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (80455807)
飯塚 淳 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (70451862)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2025-03-31
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キーワード | ニッケル / セレン / ヒ素 / 生物学的回収 |
研究実績の概要 |
延長となった2023年度は、金属についてレアメタルのニッケル、セレン、そして有害金属についてはヒ素とカドミウムについて、それぞれの生物回収について研究を進めた。 ニッケルイオンに結合するタンパク質NikAとRcnRの遺伝子を細胞表面に発現する組換え酵母による広範囲(1~1000ppm)のニッケル吸着および両タンパクを提示した酵母による吸着挙動を比較した。また、組換え酵母はpH2~中性、塩分は0.1~3.5%に生育可能とし、ニッケルの回収条件として検討が広がったことも確認した。上記の結果を2023年8月国際会議WRI-17にて口頭発表を行った。 セレンに対して、セレン酸または亜セレン酸を還元する微生物を計24株単離し、そのうち異なる6株の単離菌に対してセレン耐性およびセレン還元能を調査したところ、6株とも亜セレン酸とセレン酸に強い耐性を有し、また、全ての菌株はセレン酸から亜セレン酸の還元がセレン除去の律速反応になっていることがわかった。これらの成果を2023年6月に環境バイオテクノロジー学会にポスター発表を行った。 一方、ヒ素の超蓄積植物モエジマシダの根分泌物とその根圏微生物の代謝産物、その他カドミウムと亜鉛の超蓄積植物ハクサンハタザオの根の分泌物試料を、共同研究先の台湾中央研究院に送り、LC-MS/MSを用いた代謝産物のメタボローム解析をしてもらった。その結果、モエジマシダの根圏微生物が分泌する環状ジペプチドを含む複数の代謝産物が植物の成長を促進し、結果としてヒ素超蓄積植物のバイオマス増加に寄与することがわかった。これらの結果を、現在英文論文に執筆中である。その関連成果を11月にヒ素シンポジウムにて口頭発表を行った。さらに、生物学的ヒ素除去は金属回収について、9月に国内学会の日本生物工学会と資源・素材学会に招待講演をし、また台湾に開催された国際学会にて招待講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分子生物工学手法の導入による新規金属回収技術の実現を図る本研究は、共同研究先の台湾への渡航が2019-2022年と3年も遅れたため、台湾からの技術移転に大きな遅れが出ており、今でもまだ日本の研究室に技術移転できてない。しかし、2023年に代表者の簡が技術移転の取得と成果発表のため、共同研究先に3度渡航でき、さらに指導する学生の派遣にも達成した。1ヶ月間の滞在期間中、遺伝子導入のノーハウを取得し、また関連微生物試料・DNA試料を日本に送ってもらったため、あともう少しで構築ができると予想している。 一方、もう1つの課題であった、新規生物学的金属回収機能の獲得について、金属対象を当初のモリブデンから、金属資源としてはニッケル、セレン、また有害金属のヒ素やカドミウムについても広げた。 セレンについては、今後共同研究先と共同でゲノム解析することにより、セレン還元に関連する遺伝子の同定が予想できる。ヒ素やカドミウムについては、それぞれの超蓄積植物や根圏微生物の代謝産物を共同研究先の台湾中央研究院に送り、LC-MS/MSを用いた代謝産物のメタボローム解析をしてもらい、得られた結果を、現在英文論文に執筆中である。2023年度で行った研究成果は、合計国内学会4回(うち招待講演2回)、国際学会2回(うち招待講演1回)を行い、研究進捗の遅れを大きく取り戻していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
金属吸着遺伝子を合成生物手法により酵母に導入する件について、当初渡航を計画した代表者の簡と研究分担者の菅原はそれぞれ東北大学の准教授と北九州市立大学の講師に昇任し、長期間海外に出向いて実験するのが難しくなった。本研究が計画した研究進捗の遅れを取り戻す体制として、2024年度に新たに専任の研究員を一人雇用し、プロジェクトの内容を遂行する。2023年10月に博士後期課程に進学した博士学生とも中心となり、金属吸着遺伝子のゲノム導入技術を早期に研究室にて構築できるようにする。一方、金属吸着遺伝子の酵母への導入に関しては、2023年度末に学生を台湾中興大学生命科学研究科の協力研究者の黄先生の研究室に派遣した際に、遺伝子導入のスキルや諸条件を伝授いただいた。また、遺伝子導入時に使用する酵母株やプラスミドなどの試料をも送ってもらったため、金属を吸着する遺伝子を酵母のゲノムに導入し、効率的にかつ安定な金属吸着微生物の作成が成功する可能性が高いと言える。 その最初の対象金属として、これまで検討してきたニッケル吸着遺伝子のnikAとrcnRを検討する。続いて、他の金属資源の生物回収について、セレン還元菌によるセレン回収の現象を確認する上、これらの還元菌が保有するセレン還元に寄与する遺伝子をゲノム解読により特定する。その後、関連遺伝子を取り出して上記システムに導入すると考える。また、有害金属のヒ素やカドミウムについては、植物・微生物によるヒ素の効率的除去を実環境に適用し、土壌・微生物・植物間の相互作用をも検討し、現場に適用できる除去技術として検討する。 年度末には、共同研究者を仙台にお呼びして、国際シンポジウムを開催し本研究による成果を発信する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度に台湾あるいは日本にて国際シンポジウムの開催を予定していたが、2023年9月に共同研究先の台湾中興大学が、国際シンポジウムを開催し、それに便乗して発表をしたため、開催費用(人的費用(旅費)を約120万円、会場・その他費用30万円で合計150万円が未支出のままだった。また、2023年度に東北大学の院生を台湾に1ヶ月間派遣したが、派遣時期が年度末の3月で、予算処理が間に合わなかったため、2024年度の会計になった。さらに、当該院生は東北大学博士課程学生の挑戦的研究支援費からも研究費をもらったため、予定していた滞在費(約50万円)を大幅に削減できる予想になる。そのため、2024年度も学生を派遣することができ、より研究を進める予想になる。 2024年度の使用計画として、まず研究進捗を取り戻すために、新たにプロジェクトを推進する専任の研究員を一人雇用し、その雇用する人件費(240万円予定)に当たる。また、再度学生を派遣(1人*1ヶ月間)し、遅れた研究予定を取り戻す。合わせて試料の国際郵送や試薬、備品の購入も発生するため、その費用の執行を予定する。また、2024年度末に台湾側の研究協力者の先生を日本に招聘して国際シンポジウムを開催する予定で、その開催費用に当たる。
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