研究課題/領域番号 |
19KK0134
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
関 修平 京都大学, 工学研究科, 教授 (30273709)
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研究分担者 |
櫻井 庸明 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 講師 (50632907)
筒井 祐介 京都大学, 工学研究科, 助教 (50845592)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | 粒子線 / イオンビーム / ナノワイヤー / SPNT / STLiP / ナノ材料 / 重合 / PDT |
研究実績の概要 |
本研究では,「1つの原子反応」による「1桁nm領域のナノ材料」の形成手法をもとに,Single (particle) x Single (nm)となる材料形成を軸とした国際共同研究の展開を目的としている.令和2年度は,COVID-19によるドイツ・インドへの渡航実験が不可能となるなか,試料のやり取りとオンライン議論を通じて京都大学(KU)・量研機構(QST)・ドイツ(GSI)・インド(IUAC)3極間の共同研究を,主にSingle Particle Triggered Linear Polymerization: STLiP法 によるナノ構造材料形成を軸に展開した.低エネルギー多価重粒子線による反応を主にIUACにおいて,また高エネルギー重粒子線による高アスペクト有機ナノ材料形成をGSIにおいて実施し,特に,ポルフィリン分子の連結による高分子架橋構造の形成と,ナノ構造中に含まれるポルフィリン骨格への中心金属置換とBuckminster Fullereneに代表される他の電子機能を有するナノ構造との複合機能化とその特性評価を行った.ポルフィリンナノ材料群の活性酸素源としての有効性を端緒に, Photodynamic Therapyへの応用にとどまらず,それぞれのユニットの正孔・電子輸送特性の組み合わせにおいて,分子素子サイズの実電子デバイスとしての作動の確認を行った.KU-QST-GSIの協働では,より広いエネルギーおよびエネルギー付与ダイナミックレンジにおける超微細空間の自由な制御とその中での有機分子重合反応・ナノ構造化がさまざまな分子性物質のナノ構造化における高い普遍性を有することを端的に示すことができた.これらの国際協働研究の結果,従来の微細加工法では決して達成できないアスペクト比が数100に達する自立性ナノワイヤーの形成が可能であることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
国際共同研究として日本―ドイツーインドの加速器群を包括したナノ材料形成プラットフォームの形成は予定より順調に推移しているが,COVID-19の影響に伴い,相互の研究機関をまたいだ人的な協働については本年度も実施を見送った.一方で,核となる有機分子性材料のライブラリ構築は,むしろKUにおいて加速し,これまでにナノ構造化に成功した分子性物質のライブラリは200種を超えた.今後のナノ材料形成実験への展開に向けた多くの候補分子性材料の選定は本研究の目標であるライブラリの構築に向けて,当初の目標である300種を大きく超えられると予想できる.このライブラリをもとにしたKU-QST-GSI-IUAC間での情報共有も論文としての発表を含めて大きく進捗しており,研究終了時に向けた実応用ナノ材料群の提案に向けて極めて順調に推移していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度においても,オンラインによる研究計画の相互確認と実際の実験実施条件の提案が特に問題なく進められることを踏まえ,対象となる有機分子性材料のライブラリ構築のためにむしろGSI-IUACへの渡航を含めた実働実験よりは,KUにおける材料開拓に重点を置いて研究を進め,実際の重粒子線照における検討は当面,主にオンラインによって行う予定である. 新型コロナウィルスによる影響の終息後,KU-QST-GSI-IUAC相互のナノ材料形成研究拠点の構築に向けた実質的な議論を再開し,加速器技術の材料形成の展開における問題点・構築されたナノ材料のプラットフォームとしての本研究拠点外への提供手法について,合議しつつ知的財産権の確保を含めて進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19による実渡航実験を延期したため
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