研究課題
本研究では,荷電粒子誘起重合反応を基軸とし,一次元有機ナノ構造体:ナノワイヤ形成における分子構造と反応効率の関係性及びナノ材料応用に向けた機能性の実証に関して,ドイツ・GSI及びインド・IUACとの国際共同研究を実施し,連携研究拠点の構築を行った.具体的な研究成果として,1.直立型ナノ構造体創成を志向し,その足掛かりとして,重合反応効率とナノワイヤの剛直性つまり直立性の相関を実証するために,スピロ芳香族化合物誘導体を対象に反応活性置換基効果の定量評価を行った.臭素原子及びエチニル基置換体において,その置換数とナノワイヤ径との関係性および含有元素量の定量評価によって,臭素原子解離及びビニルラジカル生成が重合反応を促進することを見出した.置換基の系統的な制御による知見は,今後の材料分子設計や機能性変調に大きく資する.2.π共役型平面分子:ポルフィリン誘導体を材料としたナノワイヤ形成において,種々分光測定に基づく特徴的なピークの維持は,ポルフィリン平面骨格の一次元ナノワイヤ中への固定化を多角的に示している.光線力学療法を指向した一重項酸素生成評価によってナノワイヤの効率的な増感作用の実証,および銀ナノ粒子複合体形成における表面プラズモン共鳴を介した顕著な蛍光増強は,いずれもナノワイヤ表面を反応場・認識場とした材料展開が可能と考えられる.3.粒子線照射新規手法によってナノワイヤ長・配向特性の飛躍的な向上を同時に達成している.n型有機半導体フラーレン(C60)をもとに得られた配向ナノワイヤアレイによる電界効果トランジスタ中でのホッピング伝導機構の指摘は妥当であり,今後より詳細な輸送機構の定量評価が期待される.時間分解マイクロ波分光法による伝導計測では,従来の有機電子材料の凝縮相における異方伝導特性をはるかに凌駕する100に達する巨大異方的伝導特性を示すことを指摘した.
すべて 2022 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
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