研究課題/領域番号 |
19KK0137
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
解良 聡 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 教授 (10334202)
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研究分担者 |
松井 文彦 分子科学研究所, 極端紫外光研究施設, 教授 (60324977)
田中 清尚 分子科学研究所, 極端紫外光研究施設, 准教授 (60511003)
長谷川 友里 立命館大学, 理工学部, 助教 (60829464)
出田 真一郎 広島大学, 放射光科学研究センター, 准教授 (80737049)
山田 一斗 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 特任研究員 (50836210) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | 運動量顕微鏡 / 電子構造 / 分子軌道 / 光電子分光 / 機能材料 / シンクロトロン放射光 / 電子スピン |
研究実績の概要 |
物性・機能発現において、局所的な原子構造と価電子状態が寄与する原理を明らかにし、いかにそれらを制御するかが課題となっている。そのための最短の道筋のひとつとして最新鋭の波数分解顕微鏡を用いた新規光電子分光法(光電子運動量顕微鏡)の確立と、機能性材料の電子状態研究のフロンティアの開拓を目的として研究を進めた。日独のグループが独自の測定手法(日)と新規分析装置(独)の開発技術を共有することで、波数顕微鏡法をベースにした先端的な電子分光法を確立し、複数の先端研究を推進するユニークな計測プラットフォームを構築することが目的である。2020年度に引き続き2021年度も全世界的な未曽有のコロナ禍により本課題目的の国際交流のほとんどは実施不能であった。現地でのコミュニケーションや作業を通じた実験によるノウハウの享受は画面越しのオンライン型ではかなわない。ドイツでハイブリッド型で開催された国際会議には、国内からはオンライン参加とせざるを得なかった。 一方で、本課題研究のもう一つの柱である新型光電子運動量顕微鏡の装置開発は国際的な競争下にあるため加速度的に推進する必要がある。そのため2021年度は研究費の多くを本邦における独自の機能開発に投資した。電子レンズのディフレクタ機能を追加することで3次元スピン状態の分離計測が可能になると期待されるため、プロトタイプ機構を設計製作した。また顕微鏡測定のためには、事前に測定試料の簡易評価を行っておき、顕微パラメータの調整時間を短縮することが望ましい。そのために超高真空状態を一定時間保持し、当該試料を別装置へ試料状態を保持したまま輸送できる真空搬送機構を開発した。これにより光損傷の影響等により測定が煩雑となる分子試料についての状態イメージ計測の道が開かれると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究推進の要となる最新鋭の光電子運動量顕微鏡実験装置はUVSOR施設に導入され測定が開始されて成果報告も実施できている。しかし具体的な技術ノウハウ取得のための現地での実地訓練や作業は全くかなわなかった。ドイツで開催された国際研究会にはオンライン出席したが、通常オンサイトのコミュニケーションで期待できるフランクな意見交換の機会が無く、人的相互作用の効果は限定的であった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度もコロナ禍により海外渡航が途絶えた。オンラインベースの議論では本研究で掲げる技術ノウハウの伝承(輸入)にはほど遠い。最終年度2022年は是が非でもドイツ現地における研究活動が実現することを願うのみである。同時に国内UVSOR施設では光電子運動量顕微鏡(PMM)の性能向上へ向けた機能アップグレードを継続する。国際的に唯一の装置として起動すべくパラメータ調整を進める [松井・解良・田中]。当初計画の国際交流による技術移転を大幅に変更し、国内独自で並行して新たに技術開発を試みることとした。昨年度に導入した拡張機器開発を国内で進め、今後の国際交流の折には情報交換の場で優位に立てるよう議論に生かしたい。他機関へ転出した若手2名はUVSORで多様なスピン量子材料・超伝導物質・有機無機複合界面を含む物質系の測定を行いつつ計測技術の腕を磨く[長谷川・出田]とともに、機会が得られれば、積極的にドイツやイタリアにおける先行実験設備を利用した測定も実施し、複数の類似装置群による計測を経験することで初めて得られる技術ノウハウを蓄積する。またPMM装置の普及に向け、今後の国際コミュニティの構築に資するために、国際シンポジウムの運営に協力し、国内ユーザーへの広報支援を通じてコミュニティ育成に資する[松井・解良]。こうした関連研究会にて成果を発表し議論を深める[田中・長谷川・出田]。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ過により海外渡航が不可能となったため、計画を大幅に変更し旅費ではなく物品費にて消化したが全額を使用できなかった。次年度の渡航費に充てる。
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