研究課題/領域番号 |
19KK0138
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
忍久保 洋 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50281100)
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研究分担者 |
三宅 由寛 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (00347270)
Shin Jiyoung 名古屋大学, 工学研究科(国際), 教授 (30622295)
福井 識人 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (70823277)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | ジアザポルフィリン / ヘテロ元素 / 光線力学的療法 / がん / 一重項酸素 |
研究実績の概要 |
ヘムタンパク質のヘムを人工ヘムに置き換えることで、ヘムタンパク質の活性を向上させる研究が注目されている。人工ヘムとして、ヘテロポルフィリンなどの構造改変したポルフィリンを用いると、大きな電子的影響によりヘムタンパク質の機能に大きな変調をもたらすことが期待できる。本研究では、緑膿菌に存在するヘム獲得タンパク質 HasAに着目し、これに人工ヘムとして酸素を導入したカチオン性ポルフィリン類縁体である5-オキサポルフィリニウムカチオンをHasAに再構成させることを試みた。まず、オキサポルフィリニウムカチオンに種々の金属塩を作用させることで、対応する金属錯体を良好な収率で得ることができた。種々の金属錯体のHasAへの取り込みを検討したところ、オキサポルフィリニウムの中心金属としてコバルトを用いたときに効率的に再構成が起こることを見いだした。再構成の過程で、コバルト中心は3価へと酸化されることをNMR、ESR、および吸収スペクトル測定から明らかにした。興味深いことに、この再構成HasAは、緑膿菌の増殖阻害効果を示した。コバルトオキサポルフィリニウムカチオンによる阻害活性は、通常の中性コバルトポルフィリンをHasAに再構成させたものよりも高かった。さらにこの増殖阻害法は、多剤耐性緑膿菌に対しても有効であった。 また、得られた金属オキサポルフィリニウムの光線力学療法における活性についても調査を進めている。 一方、昨年合成に成功した糖鎖をもつジアザポルフィリンは、ヒトの乳がん細胞を用いた実験により、従来のジアザポルフィリンよりも光線力学療法における活性が高いことがわかった。この結果から、ジアザポルフィリンが光線力学療法における光増感剤として有望であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本側での合成実験は順調に進行しており、今年度は新たにチアポルフィリニウムカチオンやアザポルフィリニウムカチオンの合成を達成した。フランス側、韓国側に日本側から若手研究者を派遣できなかったが、PDT活性評価実験や光物性評価も進んでおり、成果が得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究によって、糖鎖で修飾されたジアザポルフィリンなどが優れたPDT活性を示すことが判明した。そこで、今後は高い活性が得られた化合物については魚を用いたin vivo での活性評価を行う。今年度中に研究協力者をフランスに派遣して、これらの実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、若手研究者である研究分担者(福井識人)を合成した化合物を用いた生物学的実験と研究打ち合わせを行うためにモンペリエ大学(フランス)に派遣する予定であった。しかし、Covid-19感染症が拡大している状況でこの派遣が叶わなかった。そこで、本年度中できるだけ早期に研究分担者を派遣したい。その際の実験のために使用する化合物合成のための消耗品としても使用する予定である。
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