研究課題/領域番号 |
19KK0141
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
柴 弘太 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (20638126)
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研究分担者 |
田村 亮 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究員 (20636998)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | 粘性係数 / マイクロ流路 / 流体力学 / 構造力学 / 流体―構造相互作用 / 気体 / 液体 / 流体 |
研究実績の概要 |
本研究は、申請者独自の分子量測定法(大気環境、リアルタイム、非破壊)を、国際共同研究を推進するProf. Weitzとともに発展させ、モバイル用途まで見据えたイオン化不要の新奇質量分析法の創出を目指すものである。従来の質量分析は、試料をイオン化・断片化し、それらを逐次測定することで、試料の構造に由来する情報(マススペクトル)を得るという非常に優れた定性・定量手法である。しかし、試料のイオン化のためには真空環境が必須となるため、原理的に装置の小型化、とりわけコンシューマー用途まで視野に入れたモバイル化には、ブレークスルーが必要であった。一方、申請者が開発した分子量測定法(流体熱力学質量分析、AMA)は、大気環境下で実施可能であるため、従来法が抱える原理的な制約に縛られない様々な可能性を有している。目下の課題は、分子量の決定だけでは、分子量が同じ試料(例えば構造異性体)に対しては適用できないという点にある。この課題を解決すべく、申請者は分子量とは独立した試料に固有のパラメータを選定し、それを分子量と同時に決定することで、構造異性体などまで含めたあらゆる試料に対応可能なアプローチを着想した。そのようなパラメータとして、試料の「粘度」に着目し、その定量に向けた検討を行った。その結果、Prof. Weitzが主な研究対象としているマイクロ流体関連技術を用いることで、粘度の定量手法の確立に成功した。本手法は気体のみならず、数桁以上粘度の異なる液体にまで適用可能であることを確認しており、当初期待していた範囲を超えて様々な展開が見込まれる。本手法に関しては、現在論文投稿中であり、特許申請も準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2020年度は申請者が引き続きProf. Weitzの研究室に滞在して研究を進展させる予定であったが、COVID-19の世界的流行の影響を受け、きわめて大きな制限のもと計画を実施することを余儀なくされた。それにもかかわらず、流体の粘度を測定する新たな手法を開発することに成功した。本手法が気体のみならず液体にも適用可能である点は当初予期していなかったことであり、結果として本研究の可能性を大きく広げるものとなった。そうした理由および今日までのCOVID-19関連情勢を鑑みても、現在の進捗状況は大変良好であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、前年度までに確立した流体粘度測定手法と、申請者が以前に報告した分子量測定手法を組み合わせることにより、一度の測定で両パラメータを定量可能なデバイスの試作に注力する。この目的に向け、有限要素法によるシミュレーションと機械学習を活用する。具体的には、シミュレーションにより得られる値を最適化するような機械学習モデルを構築し、その最適値を実現するであろう実験条件・デバイス構成をピンポイントで実験することにより、効率的な研究推進を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
米国からの帰国時、成田空港から自宅までのハイヤー代等を捻出するための予算を確保したため、わずかな差額が生じた。この分は、次年度の消耗品費用で調整する予定である。
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