研究課題/領域番号 |
19KK0149
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
荒川 賢治 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 准教授 (80346527)
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研究分担者 |
小山 寛喜 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (20746515)
国吉 久人 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 准教授 (60335643)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2022-03-31
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キーワード | 生理活性物質 / 内生放線菌 / シグナル分子 / ミズクラゲ / 甲殻類 |
研究実績の概要 |
我が国の喫緊の課題である健康長寿の維持増進および地球温暖化に伴う熱帯地域感染症への対策に資するため、放線菌を生物資源ターゲットに設定し、インドネシア・スラウェシ島における新たな微生物分離源の開拓を行うとともに、シグナル分子二次代謝誘導系を利用した天然物探索方法の開発を目指す。インドネシアの生物多様性に富んだ研究シーズ(熱帯特有の植物内生菌、珊瑚・海綿共生菌および水圏生物)と日本側の研究シーズ(生物活性物質の構造決定・水圏生物を利用した生物活性試験・シグナル分子を利用した天然物探索)を融合し、強固な共同研究体制の確立と若手研究者の国際展開を遂行する。我々は、放線菌を生物資源ターゲットに設定し、世界有数の生物多様性の宝庫であるインドネシア・スラウェシ島に注目し、人的交流・研究シーズ共有を通じて深化し、新たな微生物資源の開拓と有用性の再定義、および革新的な休眠二次代謝活性化技法の確立、さらに水圏生物の代謝動態を指標にした生理活性現象の探索、を通じて、新たな分子構造特性を有する生理活性分子の創出を目指す。 さらに本研究種目の趣旨に則り、(1) 海外との堅牢な研究ネットワークの構築、(2) 若手研究者の育成、(3) 自身の研究のみならず学術界全体への波及効果を念頭に置いた研究課題設定、も掲げる。(3)に関しては、新規分離源の開拓はもちろんのこと、研究代表者が注力している新規天然物探索方法と組み合わせることで、ゲノム情報も有効かつ徹底的に利活用した天然物生理活性物質の獲得を目指す。2019年度は、相手国研究代表者および研究者の来日と研究打ち合わせ、そして研究代表者および博士研究員が渡航し、サンプルの化合物抽出・生物活性試験などの共同研究を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は、まず生物資源の取り扱いに伴う点を考慮し、広島大学、東京海洋大学、マカッサル州立大学の三者間において共同研究契約の締結を行った。研究代表者および博士研究員が渡航し、現地にて放線菌サンプルからの代謝産物抽出および生物活性試験を行った。2020年度以降の現地での共同研究遂行のための環境基盤整備も行った。また、生物資源サンプルの共同利用に関する協定も締結したが、新型コロナウィルスの影響により3月中盤以降は現地の研究活動が停止されているため、新規株の解析は進められていない。 研究ネットワークの構築のため、大学間国際交流協定を締結した。相手大学の全面的なサポート体制も整い、本研究課題の円滑な遂行が期待できる。なお、日程調整が付かなかったため、2019年度の研究分担者および若手研究者の渡航は実現できなかった。研究代表者、研究分担者、若手研究者および博士研究員、大学院生3名の渡航も2020年度夏を予定しているが、新型コロナウィルスの影響により大幅にずれ込むことが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
[課題1] 内生放線菌単離株からの生理活性分子の構造決定:単離された内生菌について、抗菌化合物の構造決定を行う。本株の大量培養や抽出物取得はすでに先方にて着手しており、日本側にて NMR, MS による分光機器解析を行う。[課題2] 低分子量シグナル分子を利用した天然物探索方法の開発:各種単離株もしくは分離前の菌叢に対して2,3-二置換ブテノライド型誘導シグナル分子 SRB を添加し、非添加サンプルとのTLC, 生物活性比較を行う。添加有無による代謝プロファイルおよび生物活性変化が見られた場合、代謝産物の構造解析に着手する。新規分離源サンプルへの適用により、新規分子骨格を有する代謝産物の獲得が期待できる。[課題3] 水圏生物(ミズクラゲ, 甲殻類)を利用した生物活性試験:ミズクラゲおよび甲殻類を用いた生物活性試験を展開する。活性試験の検定生物は、まず現地にて調達し、熱帯地方での活性評価を展開する。次年度以降は日本産も含めて活性評価を行う。[課題4] 共生微生物・海洋放線菌のサンプル採集および熱帯・亜熱帯地域特有の水圏生物の生態調査:全面的なインドネシア側の協力体制を仰ぎ、新たな分離源の開拓を行う。具体的には、スラウェシ島のカルスト土壌および沿岸の南西沖珊瑚礁においてサンプル採集を行い、マカッサル州立大学にて微生物分離および抗菌活性試験を行う。また、日本側若手研究者を中心として、熱帯・亜熱帯域生物の水圏生物の代謝動態や生物多様性などの生態調査を行う。今後の国際共同研究の強化および若手研究者・研究協力者の国際展開・海外留学を視野に入れる。
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次年度使用額が生じた理由 |
日程調整が付かなかったため、2019年度の研究分担者および若手研究者の渡航は実現できなかった。また、研究代表者および博士研究員は2020年2月から渡航したが、新型コロナウィルスへの懸念から、共同研究遂行のために同行予定であった大学院生3名の渡航を断念した。そのため、年度末に予定していた渡航計画が大幅に変更となったため。2020年度の渡航計画も見通せない状況ではあるが、本研究課題の遂行のため、年度後半の長期滞在を計画している。
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