研究課題/領域番号 |
19KK0153
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高須 啓志 九州大学, 農学研究院, 教授 (50212006)
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研究分担者 |
高野 俊一郎 九州大学, 農学研究院, 助教 (90725045)
松尾 和典 九州大学, 比較社会文化研究院, 講師 (90741281)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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キーワード | キャッサバコナカイガラムシ / 生物的防除 |
研究実績の概要 |
東南アジア農学部重要侵入害虫キャッサバコナカイガラムシの導入天敵キャッサバコナカイガラトビコバチ(以後、トビコバチ)の天敵としての有効性を評価するために、1)トビコバチの寄主選択と寄生後の寄主ので発育と繁殖、2)二次寄生蜂の寄主選択行動、3)カンボジアにおける野外でのトビコバチの寄生活動と害虫密度抑制効果について研究を行った。まず、1)のトビコバチの寄主選択では、トビコバチは1齢から3齢の若虫及び成虫の体内に1個の卵を産みつける単寄生性であること、3齢と成虫の寄主には90%以上が寄生に成功することがわかった。寄主の免疫作用である包囲化作用により蜂の卵が死亡するのは10%以下と低かった。寄生後の発育と繁殖では、コナカイガラムシは寄生後8-12日目にマミー化し死亡するまで摂食と発育を続けたが、寄生後の発育は遅れ、次の脱皮まで約2日未寄生の個体に比べて遅れた。また、3齢1日目やそれより若い個体が寄生されると繁殖することなく死亡するが、4日目の3齢と成虫が寄生されると、両者は産卵すること、寄生成虫は未寄生成虫より2日早く産卵を開始することが明らかになった。寄生蜂による寄生が寄主の産卵を早めることはこの種で初めての発見である。寄生に伴う寄主の早期産卵開始は害虫と寄生蜂の個体群の維持に貢献している可能性がある。2)二次寄生蜂はトビコバチの寄生後6日目~16日目までトビコバチの幼虫、蛹、成虫に寄生できることが明らかになった。3)カンボジアにおける寄生活動と害虫個体群抑制の調査では乾季に害虫密度が上昇すること、害虫の発生に伴い寄生率が80%程度に上昇することがわかった。室内実験の結果、10頭の寄主を体液摂取することがわかり、この結果を野外のデータに当てはめると乾季は80-100%のコナカイガラムシが蜂の寄生及び体液摂取により死亡していると推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルスの蔓延により2021年度まで現地での野外研究ができず、2022年度に本格的な調査を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は侵入害虫キャッサバコナカイガラムシの防除のために東南アジアに導入されたキャッサバコナカイガラトビコバチの天敵としての有効性を評価することにある。しかし、2021年度までコロナ蔓延に伴いベトナムやカンボジアにおける現地調査ができなかったため、当初の研究期間2019~2022年度から1年間(2023年度まで)延長し研究活動を行う。2023年度は2022年度に引き続き野外でのキャッサバコナカイガラムシの天敵の有効性調査と九州大学で寄生蜂の有効性に影響する生物学的特性を解明するための室内実験を行う。まず、カンボジアのキャッサバ圃場で本害虫と寄生蜂の発生状況が明らかになったため、本害虫の生命表調査を行い、天敵が害虫個体群に及ぼす影響の定量化をめざす。次に、本害虫の死亡要因として寄主体液摂取が重要であることが示唆されたため、野外におけるトビコバチの寄主体液摂取の頻度を定量化する。さらに、PCRによる寄生率評価法を確立したため、この方法を使い、現地での正確な寄生率評価をを実施する。室内研究では、二次寄生蜂の寄主選択行動のうち寄主生息場所の探査や寄主認識機構を明らかにし、これまで全く分かっていなかった2時寄生蜂の寄生行動の全貌を明らかにする。また、二次寄生蜂がトビコバチの天敵としての有効性を低下の可能性を検討する。さらに、もう一つのトビコバチの天敵としての有効性を低下させる原因と考えられるギルド内捕食を明らかにする。さらに、これまでの研究成果を論文としてまとめ国際誌へ投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度まで予定していた現地調査がコロナ蔓延によりほとんど実施できず2022年度から現地調査を開始したため、計画していた海外旅費等に使用できなかった。2023年度まで研究を延長することを決めた。繰り越した金額は、現地(カンボジア、ベトナム、タイ)への海外出張のための旅費およびその他、国際会議および国内学会大会への参加のための旅費、および国内における室内実験のための消耗品、国際誌への投稿費(その他)に使用する。
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