研究課題/領域番号 |
19KK0161
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木下 滋晴 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (40401179)
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研究分担者 |
浅川 修一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30231872)
吉武 和敏 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (50646552)
五十嵐 洋治 三重大学, 生物資源学研究科, 助教 (60839322)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2025-03-31
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キーワード | 成長 / 筋肉 / 老化 / ゼブラフィッシュ / 近縁種 / 終生成長 |
研究実績の概要 |
魚類の体幹骨格筋は、解剖学的に遅筋、速筋、中間筋の3種類に分かれる。魚類骨格筋のもう一つの特徴は、成熟後も新生筋線維の形成が継続していることで、これが魚類の成長の鍵となっている。しかし、それぞれの筋肉の内部的な違いや、継続的な筋線維形成の基礎となるオミックスレベルの分子機構については、ほとんどわかっていない。昨年度に引き続き、ゼブラフィッシュの成魚と稚魚を用いた空間的トランスクリプトミクスデータを解析した。先行研究では中間筋は、体側部において速筋と遅筋の間に分布するとされていたが、本研究では背側や腹側にも大きく広がっていることが明らかになった。また、中間筋特異的に発現する複数の遺伝子を同定し、これらは中間筋マーカーとして使えると期待される。速筋の腹側部分は速筋型ミオシン重鎖を発現するが、他の速筋部分とは明確に異なるクラスターとして分類された。速筋の腹側部分や遅筋ではmyoDが他の領域より強く発現し、これら領域が魚類特異な成熟後の筋成長に寄与している可能性がある。また、これら筋形成が活発な腹側領域ではIGF結合タンパク質であるIGFBPの幾つかのパラログが特異的に発現することが明らかになった。IGFシグナルは成長や老化に寄与するが、IGFシグナルを調整するIGFBPは複数種存在し、魚類ではさらに多様に分化しており、それぞれの機能は明確でない。特定のIGFBPの発現が、魚類の特異な筋成長に寄与する可能性があり、今後検討が必要である。 また、研究協力関であるバングラディシュ農業大学では、ゼブラフィッシュ近縁種でゼブラフィッシュよりも大型に成長するベンガルダニオ(Devario devario)を捕獲し、現在飼育している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ感染拡大によって海外渡航ができず、予定しているバングラディシュやスリランカでの現地調査やサンプリングができていない。現地では別途独自に調査や飼育等を進めてもらっているが、計画の遅れは否めない。
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今後の研究の推進方策 |
ゼブラフィッシュを用いた空間的トランスクリプトミクスによって、筋肉の終生的な成長に関わる領域を特定したが、それら領域で特異的に発現するmTORシグナルやIGFシグナルの制御因子について、機能解析を行い、筋成長との関連を検証する。 また、昨年度は新型コロナ感染症により、海外渡航ができなかったが、本年海外渡航が可能になれば、早急にゼブラフィッシュ近縁種の調査・採集を行い、それらについてゲノムシーケンス、RNA-seqを行う。また、バングラディシュやスリランカの現地協力研究者についても、日本入国が可能な状況となれば、来日を要請し、日本において共同で遺伝子解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究ではバングラディシュ等への渡航と現地調査を行う予定でいたが、新型コロナパンデミックによってそうした活動が行えなかった。22年度以降で海外渡航が可能になれば、海外調査・サンプリングの回数を増やす予定である。
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