研究課題
マダニは、亜熱帯および熱帯地域を中心として世界的に分布している。寄生された家畜における増体率の減少や乳量の低下を引き起こし、獣医畜産領域に甚大な被害を与えている。さらに様々な人獣共通感染症を媒介するため公衆衛生上も問題となっている。マダニの制御法として殺ダニ剤の使用が主流であるが、殺ダニ剤に抵抗を持ったマダニの出現が問題となっている。オウシマダニの場合、2017年の段階で中南米の国々を中心に世界24か国から抵抗性を持つマダニの出現が報告されている。このような現状により、殺ダニ剤に頼らない新規制御法の確立が強く望まれている。マダニの唾液は病原体の伝播を促進する因子や免疫細胞の機能を抑制する因子を含むが、特定因子の同定は少ない。また、マダニ媒介性病原体の伝播機序の解明と病態形成機序の解明も限られている。そこで今年度は、マダニ由来のシスタチンであるIxodes persulcatus sialostatin L2(Ip-sL2)がBorrelia miyamotoiに対する特異免疫に及ぼす影響を検討した。B. miyamotoiを免疫したマウスの脾臓細胞を用いて検討した結果、Ip-sL2はCD11c+およびCD3+細胞の活性化ならびに抗病原体サイトカイン産生を著しく抑制した。本国際共同研究によって、家畜悪性感染症では病原体が誘導するプロスタグランジンE2によって免疫チェックポイントを介した免疫破綻が起こることが明らかになった。また、マダニは唾液に含まれるプロスタグランジンE2や免疫撹乱因子を介して宿主免疫を抑制し、吸血の維持や病原体伝播を促進していることが明らかとなった。得られた本知見を基盤に、マダニ媒介感染症を含む家畜悪性感染症の免疫撹乱機序を標的とした新規制御法の開発を推進したい。
研究室HP:https://lab-inf.vetmed.hokudai.ac.jp富永 みその 令和4年度日本産業動物獣医学会(北海道)「奨励賞」受賞。
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