研究課題
研究1年目に、単一寄生虫卵からDNAを調整する手法として「ミラシジウム孵化法」の有用性を検証したが、研究2年目(2020年度)は、この手法を野外調査で採取した多数のサンプルに適用できるように、ELISA用のマイクロプレートを応用した変法に改良した。また、フィリピン側共同研究者と研究推進Web会議を複数回開催して、野外調査の実施開始時期の見込み等について情報交換をおこなった。また、今回の研究課題を他のアジア型住血吸虫症の研究へ展開する準備として、アジア大陸部のメコンデルタ地域(ラオスおよびカンボジアのメコン川流域に位置する一部地域)で流行するメコン住血吸虫症の調査研究において必要になる、血清診断法(酵素抗体法:ELISA)のプロトコールを検討した。これまでに私たちの研究室で日本住血吸虫症を診断するELISA用に開発した組換え体抗原、および虫卵粗抗原(SEA)のメコン住血吸虫症診断用ELISAへの応用を検証した。カンボジアの住血吸虫症流行地で虫卵検査陽性と診断された患者血清および、住血吸虫症非流行地域の住民の血清を用いて検討をおこなった結果、SEAを日本住血吸虫症用ELISAのオリジナルプロトコールでの濃度(20 μg/well)より低濃度(2 μg/well)で使用するプロトコールで最も高い感度および特異性が得られた。この結果を受けて、現在、メコン住血吸虫症診断用の組換え体ELISA抗原の開発を進めている。
3: やや遅れている
日本側チームの渡航はもとよりフィリピン側チームの国内移動も制限されていたため、2020年度に予定していた現地での材料採取もできず、既に準備を完了している「寄生虫卵からのDNA調整方法」を応用した分子疫学調査ができない状況にあるため。
前年度までの予備実験の成果およびフィリピン側カウンターパートとの事前協議の内容を受けて、研究3年目(2021年度)に、日本住血吸虫症”高度”流行地を対象に調査研究をおこなう。長崎大学熱帯医学研究所寄生虫学分野濱野真二郎教授に、現地調査に研究協力者として参加していただき、アフリカでの住血吸虫症流行の疫学およびその対策との比較とそれに立脚した情報の提供を依頼する。【渡航が適わない時の計画】2021年度においても、現地への渡航が適わない時は、フィリピン側共同研究者に、日本住血吸虫症流行地での疫学情報の収集とサンプル採取を依頼して、ミラシジウムもしくはそのDNAを日本に送付してもらい、STR/MLG解析を行う運用を考える。このため、Webツールを活用して、「ミラシジウム孵化法(変法)」の先方への技術移転を進める予定でいる。
2020年度に予定していた現地での材料採取ができなくなり、分子疫学調査ができなかったため。フィリピンへの渡航が可能となり次第、日本住血吸虫症”高度”流行地の現地視察ならびに予備調査をおこなう。
すべて 2020 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
Fronters in Veterinary Sciences
巻: 7 ページ: 592783
10.3389/fvets.2020.592783.
Parasites & Vectors
巻: 13 ページ: 436
10.1186/s13071-020-04313-w.
https://www.obihiro.ac.jp/facility/protozoa/
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