研究課題/領域番号 |
19KK0173
|
研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
河津 信一郎 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 教授 (60312295)
|
研究分担者 |
尾針 由真 北海道大学, 獣医学研究院, 特別研究員(PD) (00847056)
桐木 雅史 獨協医科大学, 医学部, 講師 (50265302)
|
研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
|
キーワード | 顧みられない熱帯病 / 人獣共通感染症 / 日本住血吸虫症 / スイギュウ / マイクロサテライトマーカー |
研究実績の概要 |
研究3年目(2021年度)には、単一寄生虫卵からDNAを調整するため、現行の「ミラシジウム孵化法」に改良を加えたプロトコールを確立した。また、フィリピン側共同研究者と研究推進Web会議を複数回実施して、このプロトコールの技術移転を試みるとともに、野外調査実施開始時期の見込み等について情報交換を行なった。また、今回の研究課題を他のアジア型住血吸虫症の研究へ展開する準備として、アジア大陸部のメコンデルタ地域(ラオスおよびカンボジアのメコン川流域に位置する一部地域)で流行するメコン住血吸虫症の調査研究において必要になる、血清診断法(酵素抗体法:ELISA)のプロトコールを検討した。研究分担者(獨協医科大学国際協力・支援センターの熱帯病寄生虫病室)にアーカイブされていたメコン住血吸虫成虫体のサンプルからRNAを抽出してRNAシーケンスを行った。得られた情報を基に、メコン住血吸虫のチオレドキシンペルオキシダーゼ-1の遺伝子を単離して、大腸菌で組換体タンパク質(rSmTPx-1)を作製した。rSmTPx-1のメコン住血吸虫症診断用ELISAへの応用を検証したところ、良好な感度(Kato-Katz法での虫卵検査陽性のカンボジア人患者血清28検体に対して89.3%)及び特異性(Kato-Katz法での虫卵検査陰性のカンボジア人住民血清30検体に対して93.3%)が得られた。ELISA 陽性・陰性のカットオフ値は住血吸虫症の非流行地(米国)住民の血清30検体に対して算定した。この結果を受けて、現在、メコン住血吸虫症診断用の組換え体ELISA抗原の開発を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日本側チームの渡航はもとよりフィリピン側チームの国内移動も制限さていたため、2021年度に予定していた現地での材料採取もできず、既に準備を完了している「寄生虫卵からのDNA調整方法」を応用した分子疫学調査ができない状況にあるため。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度までの予備実験の成果およびフィリピン側カウンターパートとの事前協議の内容を受けて、研究4年目(2022年度)に、日本住血吸虫症”高度”流行地を対象に調査研究をおこなう。長崎大学熱帯医学研究所寄生虫学分野濱野真二郎教授に、現地調査に研究協力者として参加していただき、アフリカでの住血吸虫症流行の疫学およびその対策との比較とそれに立脚した情報の提供を依頼する。【渡航が適わない時の計画】2022年度においても、現地への渡航が適わない時は、フィリピン側共同研究者に、日本住血吸虫症流行地での疫学情報の収集とサンプル採取を依頼して、ミラシジウムもしくはそのDNAを日本に送付してもらい、STR/MLG解析を行う運用を考える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に予定していた現地での材料採取ができなくなり、分子疫学調査ができなかったため。フィリピンへの渡航が可能となり次第、日本住血吸虫症”高度”流行地の現地視察ならびに予備調査をおこなう。
|