研究課題
研究5年目(2023年度)に、調査地をLeyte州Tacloban市近郊の集落7カ所として、スイギュウからの糞便と血清の採取を行った。スイギュウ(合計55頭)からの採材は農業省の地域事務所の協力を得て行った。FECT 法での虫卵検査の結果、3カ所の集落(Maliwaliw、San Isidro及びBagong Lipunan)で飼育されていたスイギュウ、それぞれ、1-2頭(合計4頭)が日本住血吸虫症陽性と診断された。患畜あたり1-6個の虫卵を70%エタノールあるいはDNA sheildに保存して日本に持ち帰り、単一寄生虫卵からのDNAサンプルの調整を行った。現在、これらDNAサンプルについて、マイクロサテライト(STR)マーカーによる多座位の遺伝子型(multi-locus genotype: MLG)解析を進めている。調査研究期間中にLeyte州Tacloban市近郊の集落4カ所の患者から採取した虫卵由来のDNAを対象に行ったSTR/MLG解析では、これら集落に分布する寄生虫間でのgene flow(遺伝子流動)が観察され、この地域での人や家畜の移動を示唆する結果が得られている。また、メコン住血吸虫(Schistosoma mekongi)のドラフトゲノムを取得して、この寄生虫種のチオレドキシンペルオキシダーゼ-1組換体タンパク質(rSmTPx-1)を抗原として応用したELISA法のメコン住血吸虫症患者の診断における有用性を検証した。Kato-Katz法で住血吸虫症陽性と診断されたカンボジア人患者血清28検体とラオス人に患者血清30検体(合計58検体)及び陰性と診断されたカンボジア人血清30検体とラオス人血清30検体(合計60検体)で評価したところ、感度84.5%及び特異性93.3%の好成績が得られた。一方、rSmTPx-1 を抗原として用いるELISAでは、タイ肝吸虫症の患者血清とも交差反応を示すことが解った。このことから、組換体抗原の改良の必要性が示唆された。組換体抗原を用いるELISAは、抗原の大量供給と品質管理が容易なことから、大規模調査への応用が期待できる。
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Parasitol. Int.
巻: 99 ページ: 102833
10.1016/j.parint.2023.102833.
https://www.obihiro.ac.jp/facility/protozoa/
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