研究課題
牛バベシア病とは、マダニによって媒介され、赤血球に寄生して牛に発熱、貧血、血色素尿を呈し、多大な経済的被害をもたらす海外悪性伝染病である。我々がスリランカ国で発見した新バベシアは、我が国で家畜法定伝染病の病原体に指定されている既知のBabesia bovisとBabesia bigeminaに続く、第3の病原性牛バベシア(Babesia sp. Mymensingh)である。本申請課題では、新たに発見された病原性牛バベシアに対する国際防疫体制強化に資する学術基盤を構築していくことを目的とした。最終年度までに得られた成果の概要は以下の通りである。まず、新牛バベシア病の病原体であるBabesia sp. Mymensinghに特異的な遺伝子診断用PCRを構築し、本牛バベシア種の宿主範囲と世界規模での感染分布を確認することとした。すなわち、1)スリランカ、フィリピン、ベトナム、ウガンダ、ブラジル、及びアルゼンチンの牛、2)スリランカとベトナムの水牛、3)ベトナムの山羊、4)ベトナムの羊、及び5)モンゴルとエジプトのラクダを含む合計3,313 の血液由来DNAサンプルに対して、上記PCRによるスクリーニング診断を行った。その結果、Babesia sp. Mymensinghは、調査を行ったすべての反芻動物種でその感染が確認された。また、ブラジルを除くすべての国々から、本バベシア種が検出された。これらの成果により、本バベシア種が牛のみならず、水牛、羊、山羊、及びラクダにも感染し、かつアジア、アフリカ、南アメリカに広く分布していることが明らかとなった。その後、本牛バベシア種の形態学的・遺伝学的特徴や感染時の臨床学的・治療学的特徴を精査・取りまとめを行い、最終年度には高病原性牛バベシア病を引き起こす新たな新種として、正式な学名“Babesia naoakii”を登録した。
すべて 2022 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 備考 (2件)
Parasites & Vectors
巻: 15 ページ: 299
10.1186/s13071-022-05374-9
Parasitology International
巻: 90 ページ: 102618~102618
10.1016/j.parint.2022.102618
Ticks and Tick-borne Diseases
巻: 13 ページ: 101871~101871
10.1016/j.ttbdis.2021.101871
https://www.obihiro.ac.jp/facility/protozoa/en/oie-reference-centres
https://www.obihiro.ac.jp/facility/protozoa/