研究課題/領域番号 |
19KK0178
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田中 良和 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (20374225)
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研究分担者 |
山下 恵太郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 客員共同研究員 (20721690) [辞退]
松浦 友亮 大阪大学, 工学研究科, 招へい教授 (50362653)
喜多 俊介 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (10702003)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | 膜孔形成タンパク質 / デザイン / 単粒子解析 |
研究実績の概要 |
膜孔形成毒素は標的細胞の細胞膜に膜孔を形成する。膜孔は原子レベルで正確なナノメートルオーダーの孔(ナノポア)であり、これを利用した分子センサーが開発されている。更なる分子センサーの開発のために、目的に応じたサイズ・形状のナノポアを自在に作成できる技術が必要となる。本研究では、実験と計算科学を併用して膜孔のデザインを実現し、任意の分子特性のナノポアを作り出すことを目指す。本研究では黄色ブドウ球菌の膜孔形成毒素に着目して分子デザインを実施する。黄色ブドウ球菌の膜孔形成毒素は、2種類に分類される。1つはホモ7量体の膜孔を形成するアルファヘモリジン、もう一方は、2種類の異なるポリペプチド(LukF、Hlg2)が4分子ずつ会合してヘテロ8量体の膜孔を形成するガンマヘモリジンである。前年度までの研究において、アルファヘモリジンとガンマヘモリジンの立体構造情報に基づき、10種類以上のキメラタンパク質を設計・調製し、その分子特性を評価した。その結果、AFキメラのいくつかでは強い溶血活性が確認され、一方で、AG変異体はいずれも活性がなかった。そこで2021年度は、これらのキメラ変異体の立体構造を電子顕微鏡単粒子解析により解析し、溶血活性の有無と立体構造の相関について調査した。強い溶血活性を示すAF変異体についてはアルファヘモリジンと類似した7量体の構造を形成していることがわかった。また、溶血活性を示さないAG変異体については、AF変異体と同様に7量体を形成するものの、膜貫通領域が短いことがわかり、これが溶血活性を示さない原因であると推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
意図した分子が設計されていることを電顕単粒子解析により明らかにできており、予定通りの進捗といえる。また、活性と構造の相関についての知見など、今後につながる有用な情報も得られており、最終年度の研究にむけた準備を整えることができたため、順調に進展していると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度までの研究により、活性の有無に関わらず、AF変異体もAG変異体も7量体として会合することができることはわかった。今後はこれらの変異体が会合した場合のシナジー効果についての詳細な知見を得ることを目指す。これにより、二成分性が会合する原理についての詳細が明らかにできると期待する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染拡大により当該年度に海外での研究活動ができなくなり、次年度に実施する必要が出たため。
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