研究課題
今年度は,Dynamin 2の異常で起こる筋疾患である先天性ミオパチーについて,研究の進展があった.先天性ミオパチーの一つである中心核ミオパチー(Centronuclear Myopathy; CNM)の患者では,骨格筋の興奮収縮連関に必要な細胞膜の陥入構造(T管)の形成異常により,筋収縮が正常に起こらない.先行研究で,Dynamin 2の遺伝子上のSNV(一塩基変異)が,CNM発症に関与することが示されていた.そこで,CNM変異型のDynamin 2の膜リモデリング機能異常について,in vitro再構成系による分子レベルの解析と,筋芽細胞を用いた細胞レベルの解析を行った.その結果,①Dynamin 2は,T管構造の安定化に必要であること,②CNM変異型Dynamin 2は,膜切断に必要なGTPアーゼ活性が恒常的に亢進しており,T管構造の形成異常が起こることを明らかにした(Fujise et al., JBC 2021).さらに,③CNM患者のコホート解析で同定された意義不明SNVから,in vitroおよび細胞レベルの解析法を用いて疾患責任SNVを同定することに成功した(Fujise et al., bioRxiv 2021).今年度は,新型コロナウィルスの影響もあり,イギリスへの渡航およびチームによるオンサイトミーティングを延期せざるをえなかった.しかし,研究代表者がオーガナイズした第58回日本生物物理学会年会のシンポジウム「膜のリモデリングと組織化の分子基盤」(web開催)に国際共同研究者のMcMahon博士(MRC分子生物学研究所)をゲストスピーカーとして招聘し,最新の知見についての講演をしていただき,その後チームメンバーとのディスカッションを行った.
3: やや遅れている
新型コロナウィルスの影響もあり,予定していたイギリスへの渡航ができていないため.
今後は,研究当初の予定通り,代表者(竹田)は研究の統括およびダイナミンファミリーやBARドメイン蛋白質の精製蛋白質の調製や細胞生物学的解析を行う.また分担者は,海外共同研究者(McMahon博士)や分担者(竹居)が開発した膜リモデリングのin vitro再構成系を用い,電子顕微鏡による構造解析(竹居),高速AFMによる分子動態解析(内橋),蛍光偏光顕微鏡解析(谷),数理モデリング(西上)を行う。新型コロナウィルスの状況次第で,代表者(竹田)はMcMahon研究室に滞在し,疾患型ダイナミンのin vitro膜リモデリング解析を行う。また,イギリスへの渡航が困難である場合には,オンラインでのチーム内連携を強化し,本来イギリス側で行う予定であった構造解析や分子間相互作用解析などを,国内のリソースを利用しながら進めるとともに,MRC分子生物学研究所の研究者とのネットワーキングをもオンラインで積極的に行い,学術的・人的な基盤づくりに努める.
新型コロナウィルスの影響で,イギリスへの渡航・滞在ができずに,次年度使用額が生じたが,R3年度にイギリスへの渡航・滞在を行うために使用する計画である.
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 4件) 備考 (1件)
Journal of Biological Chemistry
巻: 296 ページ: 100077~100077
10.1074/jbc.RA120.015184
FASEB J.
巻: 34(12) ページ: 16449-16463
10.1096/fj.202001240RR
https://researchmap.jp/ttakeda1126