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2020 年度 実施状況報告書

少数細胞の分裂異常が個体機能を喪失させる原理の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19KK0181
研究機関北海道大学

研究代表者

上原 亮太  北海道大学, 先端生命科学研究院, 准教授 (20580020)

研究分担者 塚田 祐基  名古屋大学, 理学研究科, 助教 (80580000)
松尾 和哉  北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (90764952)
研究期間 (年度) 2019-10-07 – 2024-03-31
キーワード細胞分裂 / 染色体 / 光制御 / 細胞骨格 / マルチスケールイメージング
研究実績の概要

本研究では、生体内で起こる少数細胞の分裂制御エラーが、個体発生や機能に及ぼす影響を定量的に明らかにして、細胞分裂異常に起因する病態形成のメカニズムを理解することを目的としている。2020年度は、前年度に作成に成功した光応答性CenpE阻害剤をゼブラフィッシュ初期胚に導入し、同化合物を用いた生体局所分裂障害の導入の実現性を明らかにすることを主な目標とした。化合物が水溶性に比較的乏しいため、投薬条件の特定に、当初予定以上に多くの検証を要した。しかし、最終的に最適処理条件を見出すことに成功し、受精直後からの投薬によって、受精後3時間程度の発生胚から再現性よく、照射光波長依存的に細胞分裂期の染色体運動をon/off制御することに成功した(固定胚を用いた蛍光抗体法および、蛍光ヒストン安定発現系統を用いた生細胞観察により確認した)。さらに、異なる光照射条件下で、同化合物処理胚の発生、生存性を追跡したところ、CenpE活性を阻害する光照射条件下(可視光照射)では、受精後10時間前後で重篤な発生障害をともなってすべての胚が死滅するのに対し、CenpE活性阻害を解除する照射条件下(UV光照射)においては、すべての胚が、無処理コントロールと差異なく正常な発生を行うことができることを見出した。このことから、同化合物を用いた分裂阻害が、CenpE阻害条件では生体機能を阻害するのに十分に高効率な分裂阻害能をもつ一方で、阻害解除条件では優れた低侵襲性を保っていることが明らかになった。一方で、より多様な細胞分裂の空間制御を実現するために、光学異性化特性の異なる数種の分裂期モータータンパク質の光応答性阻害剤の作成に着手し、そのうちの一部について、培養細胞モデルにおいて、高い時空間分解能で細胞分裂進行をon/off制御できることを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該年度の主目的であった、光応答性化合物の、ゼブラフィッシュ生体への導入および細胞分裂の光依存的な制御の実現性を明らかにすることに成功した。特に、光制御における許容的条件(CenpE機能への阻害効果が抑えられる、UV光照射条件)において、薬剤を処理しないコントロールと同程度に正常な胚発生が行えることを明らかにできたことが、重要な前進であると自己評価する。この検証によって、本課題の土台となる光応答性化合物を用いたアプローチの優れたスイッチ性(阻害時には効率よく生体機能を妨害し、阻害解除時には、生体機能に作用を及ぼさない性質)を明らかにすることができ、本課題全体の実現可能性をより明確にすることができた。
新型コロナウィルスの感染拡大の持続により、受け入れ研究機関との人的交流には大きな制限がかかる状態が続いているが、前年度末の計画変更通り、日本側の研究インフラを充実させながら受け入れ研究者とのオンラインの連携を拡充することで、受け入れ先で計画していた実験作業の多くを日本で実施できる体制を構築し、この不測の事態に対応して研究を推進することができている。

今後の研究の推進方策

ゼブラフィッシュ内での光応答性が確認できた化合物を中心に、胚局所における細胞分裂障害の導入と、分裂異常細胞系譜の追跡実験を中心的課題に据えて研究をすすめる。2020年度の実績により、mCherryをマーカーに用いた細胞追跡法では、観察のための励起光が化合物の光変換反応に干渉してしまう問題があることが明らかになった。そこで、より長波長の励起光で可視化できる近赤外蛍光タンパク質のmRNAおよび安定発現系統の構築をすすめる。さらに新規に作成している光応答性化合物も随時胚実験系への導入をすすめる。また、胚操作の実現性が明らかになり、2021年度は、胚深部・広域での細胞追跡が課題となることから、マルチスケール撮像系による胚形態と局所細胞追跡の同時実施を実現する。

次年度使用額が生じた理由

2020年度上半期の新型コロナウィルスの感染拡大に付随する活動制限によって、胚実験およびマルチスケール顕微鏡システム構築の一部計画を一過的に見送る必要が生じ、それに伴う予算執行が全般的に後ろ倒しになったため、当該未使用額が発生した。現在、これらの未実施項目の実施準備が整っており、2021年度に胚観察および顕微鏡システム構築に当該使用額を当てる計画である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [国際共同研究] Tata Institute of Fundamental Research(インド)

    • 国名
      インド
    • 外国機関名
      Tata Institute of Fundamental Research
  • [国際共同研究] Semmelweis University(ハンガリー)

    • 国名
      ハンガリー
    • 外国機関名
      Semmelweis University
  • [雑誌論文] Mevalonate Pathway-mediated ER Homeostasis Is Required for Haploid Stability in Human Somatic Cells2021

    • 著者名/発表者名
      Yaguchi Kan、Sato Kimino、Yoshizawa Koya、Mikami Daisuke、Yuyama Kohei、Igarashi Yasuyuki、Banhegyi Gabor、Margittai Eva、Uehara Ryota
    • 雑誌名

      Cell Structure and Function

      巻: 46 ページ: 1~9

    • DOI

      10.1247/csf.20055

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Uncoupling of DNA Replication and Centrosome Duplication Cycles Is a Primary Cause of Haploid Instability in Mammalian Somatic Cells2020

    • 著者名/発表者名
      Yoshizawa Koya、Yaguchi Kan、Uehara Ryota
    • 雑誌名

      Frontiers in Cell and Developmental Biology

      巻: 8 ページ: 1-9

    • DOI

      10.3389/fcell.2020.00721

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Ploidy-linked alterations in mitotic spindle polarity determine the long-term ploidy dynamics in mammalian cells2020

    • 著者名/発表者名
      Ryota Uehara
    • 学会等名
      第43回日本分子生物学会年会
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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