研究課題
哺乳類の胎生という生殖様式の起源に、LTRレトロトランスポゾンに由来する獲得遺伝子であるPEG10はどのように関係したのか?この問題を明らかにするため本国際共同研究を申請した。PEG10は哺乳類でも胎生の有袋類と真獣類にのみ存在する遺伝子であり、申請者らのグループは2006年に、ノックアウト(KO)マウス の解析からPeg10が真獣類において胎盤形成に必須な機能を果たすことを報告している。しかし、近年まで有袋類において、このようなKO個体を用いた遺伝学的 アプローチは手が届かない状況にあった。本研究ではオーストラリアに生息する小型有袋類ダナートを用い、最新のCRISPR/Cas9のゲノム編集技術を用いてPEG10 KO個体を作成することで、PEG10の有袋類の胎盤形成における重要性を実証するとともに、真獣類・有袋類に共通する胎盤固有の生化学機能を明らかにすることにある。これにより、哺乳類における胎生の起源におけるPEG10獲得の意義を明らかにしたいと考えている。有袋類の個体を使うゲノム編集実験であり、オーストラリアの研究者との共同研究は必須である。当初は、石野が現地で実験施設や当地での実験の進め方に関しての打ち合わせを行い、その後若手研究者が長期滞在をして実験をする予定でいたが、日本、オーストラリア両国での新型コロナウイルス対応のために、出国することができず、現在のところ実質的な実験が行えていない状況にある。オーストラリアへの入国が認められ次第、現地での実験を行う予定で、受け入れ先と継続的に話し合いは続けている。
4: 遅れている
新型コロナウイルス感染のパンデミックにより、昨年3月に予定していたオーストラリア訪問による実験計画の具体案作成の打ち合わせ、およひ昨年12月に予定していた若手研究者 北澤の長期滞在が実現していない。オーストラリアの新型コロナウイルス感染対策によりビザの発給も大幅に遅延していて、今年度の夏ごろになる予定。また、滞在する人間のワクチン接種が済まないと入国を認められない可能性もあり、実験再開の目処はついていないが、本研究の継続に関してはRenfree教授と何回も確認をしており、本年度にオーストラリア滞在が可能になったところから計画をスタートさせたいと考えているが、計画が大幅に遅れていることは否めない。
日本からオーストラリアへの研究滞在が可能になった段階ですぐに、具体的な実験を開始できるように、オーストラリアで行う実験の予備実験を日本において進める。マウスと有袋類の実験動物のダナートでは条件が大分異なることは予想されるので、マウスにおいて遺伝子導入の様々な条件を試し、すぐに現地で実験が可能な状態にしておこうと考えている。
今年度予定していた若手研究者の長期オーストラリア出張が、日本及びオーストラリアの新型コロナルウイルス感染対策のため中止になり使用できなかったため。オーストラリア入国が認められ次第、実験計画を進める予定でおり、その準備は進めている。
すべて 2021 2020 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 1件、 招待講演 6件) 備考 (1件)
Genes Cells
巻: 26 ページ: 165-179
10.1111/GTC.12830
Gut
巻: in press ページ: in press
Int J Med Sci
巻: 22 ページ: 4504
10.3390/ijms22094504
Development
巻: 147 ページ: dev185818
10.1242/dev.185918
Nat Commun
巻: 11 ページ: 4283
10.1038/s41467-020-18031-5
医学のあゆみ
巻: 273 ページ: 936-942
https://www.tmd.ac.jp/mri/epgn/index.html