次世代シークエンサーの出現とともに、全ゲノムレベルでの遺伝子発現、様々なゲノム修飾の解析は、欧米中国を中心に急速に進んでいる。エピジェネティクス研究のスピードは早く、次々と知見が塗り変わっている。様々な解析に必要な細胞数も、10年前に数億の細胞が必要であったものが、昨今は、わずか1個の細胞を用いて行えるようになり、新たな手法も次々と出現し、論文化されている。これらの流れに取り残されないために、積極的に国際共同研究にて新手法を取り入れ、さらに、未発表のエピジェネティクス関連分子の研究成果の情報交換を活発化することが必要であると考えている。イギリスBabraham研究所のグループとの国際共同研究である、scNMT法によるKit陰性精原細胞の不均一性の検証は、コロナ前に一度訪英し、一部の技術習得を行なっていたものをベースに、zoomなどを介した議論を重ね、ほぼ一通りの解析を終える段階まで来た。現在、得られた結果から、代表的遺伝子の妥当性の検証を行なっている。一方、胎児性多能性幹細胞(ES細胞)を中心にエピジェネティクス研究を行なっているDresdenのグループとの国際共同研究により、新たに、2つのヒストンメチル化酵素が、精子幹細胞から分化する際に必要不可欠な分子の可能性が高いと考えられた。これまで、その検証を引き続き行なってきた。日独得意分野で役割分担をしながら、精子幹細胞から分化する際の、これら2つの分子の精巣における機能解析を行うために、分子細胞生物学的アプローチの実験材料となる精子幹細胞株の樹立、さらに個体を用いて、分化マーカーを併用した免疫組織学的解析、あるいは、生化学的解析を行い、精子幹細胞分化におけるこれら2つの分子の作用機序を明らかにし、最終的に分化に与える影響を検討している。
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