研究課題
きわめてジェネラリスト的傾向の強い動物である霊長類が、どのように環境中の食物を利用しているかを知るには、自分自身の体を変えずに食物を利用する方法に着目することが鍵となる。本研究では、腸内細菌による消化(発酵)に着目する。大型類人猿3種(ゴリラ、チンパンジー、オランウータン)の腸内細菌による消化能力は、それぞれの生息環境の栄養学的特徴と、それへの反応としての食性に応じて異なるかを解明することを目的とする。生息環境の食物の化学成分の評価、大型類人猿3種の新鮮な糞を用いた試験管内発酵試験、糞および発酵後の懸濁液の遺伝子解析を主要な方法とし、食物の質の低い東南アジア(ボルネオ)のオランウータンでは、アフリカ(ガボン)のゴリラ・チンパンジーよりも、腸内細菌による高繊維食物の発酵能力が高いのか、また、同所的にすむアフリカ大型類人猿2種では、より葉食傾向の強いゴリラのほうが、腸内細菌による高繊維食物の発酵能力が高いのかを検証する。本年度は、オランウータンの調査の準備のために12月にマレーシアに渡航し、調査地を視察するとともに、共同研究者との打ち合わせを行った。ガボン人研究者とはテレビ電話による打ち合わせを行い、植物試料の収集を依頼した。また、本研究で用いる方法を、ニホンザルで検証した内容を論文にまとめた。
2: おおむね順調に進展している
マレーシア、ガボンの調査地のいずれも、研究の開始に着手できた。
マレーシア、ガボンの両方で実際に調査を開始する予定であるが、新型コロナウイルスの感染状況により、調査実施の方法を見直したり、場合によっては実施の延期を検討したい。
分担者の牛田及び土田は、ガボンへの出張を予定していたが、調査許可の関係で間に合わなかったため、次年度交付分とあわせてガボン出張費等に使用する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
Ecological Research
巻: 34 ページ: 842~855
10.1111/1440-1703.12059
American Journal of Primatology
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https://www.pri.kyoto-u.ac.jp/shakai-seitai/ecolcons/hanya/index.html