本助成プログラムでは、人類進化解明に古人類学的にアプローチする計画を立案した。このために、トルコ共和国の研究者をパートナーとし、トルコ共和国で類人猿・人類化石発見のため、新たな発掘調査地を開拓すべく研究を行ってきた。特に強調すべき点として、研究期間を通じて相手国であるトルコ共和国側の研究者との連携を強めることができ、今後の共同研究の礎を築くことができた。特に、新たな人的ネットワークの構築により、研究開始時には想定していなかった地域に研究範囲を広げることができた。具体的には、トルコ共和国南部の後期更新世の洞窟遺跡における発掘調査を開始し、人類遺物を発見するに至っている。 なお、フィールドワークを基礎とする本研究は、COVID-19の影響を多分に受けた。渡航の制限や、トルコ国内での移動の制約、人員の確保の制限により、調査範囲を縮小せざるを得なかった点はマイナスであった。最終的には、上述の後期更新世の洞窟遺跡の発掘調査を軌道に乗せることができたため、COVID-19の影響からできうる範囲で適切にリカバリできたと考えている。 最終年度である本年度は、洞窟遺跡で発掘された資料の比較データを得るために、新規にマイクロCTを導入し、骨格標本の三次元データを取得し、今後の成果公表にむけ予備データを得た。また、2023年10月には日本人類学会において予備データをもとに発表を行い、2024年3月には米国で開催された人類学関連では最大の国際学会である米国人類学会大会(AABA)に参加し、情報を収集するとともに、海外の研究者と情報交換を行った。発見された資料をハブとして、ヨーロッパの研究者を加えた共同研究へと発展させる計画である。
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