研究課題/領域番号 |
19KK0193
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
南部 篤 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 教授 (80180553)
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研究分担者 |
知見 聡美 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 助教 (30396262)
長谷川 拓 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研 究センター, 研究員 (90713256)
ドィーワヒュー インドリアニ 生理学研究所, システム脳科学研究領域, NIPSリサーチフェロー (40829181) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / 大脳基底核 / 大脳基底核疾患 / 定位脳手術 / 化学遺伝学 / 運動制御 / 神経生理学 / サル |
研究実績の概要 |
パーキンソン病サルの大脳基底核にウイルスベクターを注入し、治療することを計画している。 2021年度は、正常ニホンザルに化学遺伝学的手法(DREADD)を用いることにより、視床下核の神経活動をブロックすることを行った。まずウイルスベクターによって抑制型DREADD受容体をニホンザルの視床下核に発現させ、リガンド投与によりニューロンの活動が実際に抑制される様子を電気生理学的に確認した。さらに、視床下核を抑制した際に、サルの行動がどのように変化するのかを観察したところ、上肢に不随意運動が起き、また目標に手を伸ばす到達運動が不安定になった。 次に、視床下核の投射部位である淡蒼球内節・外節の活動を調べた(淡蒼球内節は大脳基底核の出力部で、情報を視床へ送る)。視床下核の抑制前後で、淡蒼球の神経活動を計測・比較したところ、神経細胞の活動の大きさ(発射頻度)はあまり変化しなかったが、発火パターンの変動は、視床下核が抑制されている場合に増大することが分ったた。さらに、この発火の変動は特に運動が遅い試行では大きいことや、不随意運動の直前に発射頻度が変化していることがわかった。視床下核が抑制されると、淡蒼球で意図しない神経活動の変化が起き、不随意運動を引き起こしていると考えられた。 これらの結果は、視床下核が大脳基底核の出力部の活動を安定化させることで、滑らかな運動を実現していることを示している。 スペインCINACとの共同研究は、新型コロナウイルス感染症のため訪問して実験を行うことはできなかったが、緊密な連絡をとることにより実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
化学遺伝学的手法によって大脳基底核をブロックできることを示すとともに、パーキンソン病に対する定位脳手術のターゲットである視床下核の新たな機能について明らかにするなど、実験計画が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
パーキンソン病モデルサルの視床下核を化学遺伝学的手法を用いてブロックする実験を開始するとともに、海外共同研究先でのサルの大脳基底核マッピングに関する共同実験を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症のため、海外へ訪問しての共同研究が実施できず、次年度使用額が生じた。次年度分と合わせて、視床下核ブロック、大脳基底核記録のための消耗品に使用する。
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