研究実績の概要 |
研究代表者は、日本、中国、米国の研究者と共に、Notch 受容体の O-グルコース糖鎖修飾が、その機能発揮に必須であることを世界に先駆けて報告してきた (Cell 2008, Nature Chemical Biology 2015, 2016, EMBO Mol Med 2016)。最近の研究代表者の研究で、O-グルコース糖鎖にはこれまで知られていなかった構造的多様性があることが分かってきた。本国際共同研究では、生化学、遺伝学、分析化学、構造生物学の専門的手法を糾合し、O-グルコース糖鎖修飾の構造多様性、そして、その生物化学的意義と生合成の構造的基盤を世界で初めて明らかにする。 NOTCH2 受容体の細胞外部位に起こる糖鎖修飾に着目し、質量分析計を用いた分子量の精密な分析を行った。その結果、NOTCH1 に初めて検出された新奇 O-グルコース糖鎖構造であると推定された構造が、キシロース転移酵素をノックアウトした細胞由来の NOTCH2 の 12 番目と 33 番目の EGF ドメインに見出され、この知見を原著論文としてまとめた。続いて、NOTCH3 受容体の細胞外部位中の 9 番目の EGF ドメインにも、同様の新奇糖鎖構造が存在することを明らかにした。さらに、新奇 O-グルコース糖鎖構造の生合成を触媒する糖転移酵素の同定にも成功し、従来型の伸長構造と新奇 O-グルコース糖鎖構造の生合成の制御に必要な EGF ドメイン中の特定のアミノ酸の同定にも成功した。このアミノ酸の変異により、O-グルコース糖鎖構造を変化させると、Notch 受容体のリガンド結合性が変化し、シグナルの強度に影響することが分かった。 以上より、Notch 受容体上の O-グルコース糖鎖修飾構造の多様性は、リガンド結合依存的な Notch 受容体活性化の精密な制御に寄与していることが明らかとなった。
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