研究実績の概要 |
本研究では、薬剤耐性緑膿菌をミャンマー4施設(サンピャ総合病院、ヤンゴン総合病院、新ヤンゴン総合病院、北オカラッパ教育総合病院)から116株収集することが出来た。薬剤感受性試験(MIC)及びカルバペネマーゼ産生試験を実施した結果、ミャンマーで分離された株の多くはST1047であった。日本やヨーロッパの流行株としてST235カルバペネム耐性緑膿菌が伝播拡大しているが、ミャンマーでは全く異なる遺伝子背景を持つカルバペネム耐性緑膿菌が独自の進化を遂げていることを示唆している。さらに、カルバペネム耐性遺伝子ではインド、中国で分離されているNDM型メタロ-β-ラクタマーゼ、DIM型メタロ-β-ラクタマーゼ、KPC型カルバペネマーゼ、GES型カルバペネマーゼをコードする遺伝子が同定された。病原因子解析においてはST1047株を用いてカイコ病原性を決定した。具体的には、多剤耐性緑膿菌株(NCGM2.S1,ST235)、感受性緑膿菌株(PAO1,ST549)、ミャンマー多剤耐性緑膿菌株(ミャンマー分離株MyJU514、ST1047)を使い、カイコ感染実験におけるLD50を産出したところ、NCGM2.S1:60CFU、PAO1:98CFU、MyJU514:4CFUであり、ミャンマーで分離された多剤耐性緑膿菌ST1047株では高いカイコ病原性が確認された。この高病原性株からゲノムを抽出し、大腸菌を用いてDNAライブラリーを作成、コロニーをカイコに接種することで病原因子を特定した結果、Type Ⅵ Secretion System(T6SS)の7型エフェクターを同定した。緑膿菌PAO1株を用いて本エフェクター因子欠損株を作製し、細胞変性効果(CPE)を確認したところ、欠損株ではCPEの低下が見られた。
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