研究課題/領域番号 |
19KK0205
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡本 宗裕 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (70177096)
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研究分担者 |
桂 有加子 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (00624727)
川合 覚 獨協医科大学, 医学部, 教授 (70275733)
案浦 健 国立感染症研究所, 寄生動物部, 主任研究官 (90407239)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | サルマラリア / カニクイザル / 野生由来 / タイ国立霊長類センター / ナノポアシーケンサー / 媒介蚊 |
研究実績の概要 |
サルマラリアは、東南アジアのマカク類を中心に30種ほどが報告されている。1960年代の実験室内の偶発事故やボランティアへの感染実験から10種ほどがヒトへも感染するとされているが、野生マカク類のサルマラリアに関する情報は極めて限られている。本研究は、タイの野生由来マカク類に寄生しているサルマラリア原虫を網羅的に調べ感染状況を把握するとともに、それらを分離・凍結保存すること、各サルマラリア原虫の媒介蚊の種を特定すること、宿主特異性を規定する宿主側の遺伝的要因を特定することを目的としている。 2019年度は、研究代表者の岡本と分担者の案浦が12月にタイ国立霊長類センターのスチンダ所長、タイ側の研究協力者であるタイ国立遺伝子生命工学研究センターのUthaipibull博士とSkypeによる研究打ち合わせを実施し、1月に日本側の研究者がタイ国立霊長類センターを訪問することになった。1月13日に研究代表者・研究分担者の案浦、川合、桂、研究協力者の兼子が同センターにて研究打ち合わせをするとともに、近隣のマラリア発生地を視察した。その後、案浦を除く4名が同センターで実施されたカニクイザルの健康診断に参加し、約250個体分の血液サンプルを採取した。採取したサンプルは、タイの研究協力者のUthaipibull博士が遺伝子抽出を行い、簡易判定を実施することになっている。 京都大学にて、ナノポアシーケンシングのためMinIONを購入し、フローセルのチェックを行った。MinIONでの解析のため、当初はMacBook Proを購入する予定だったが、GPUを搭載したMinITを用いた方がより高速に処理できることが分かったため、MinITを購入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タイ国立霊長類センターにおける1月の定期健康診断時に採取したサンプルの処理やスクリーニングは、研究協力者のUthaipibull博士の研究室で実施することになっていた。1月のタイ訪問時の計画ではもう一度3月にタイを訪問し、Uthaipibull博士と研究打ち合わせをするとともにナノポアシーケンシングに適したPCRの条件を検討する予定であった。しかし、新型コロナウイルス蔓延の関係でタイ訪問は中止となった。 MinIONを用いたナノポアシーケンシングのためにMinITを購入したが、海外からの取り寄せとなったため納品が2月となった。納品後、MinION・MinITのセットアップをおこなったところ、コントロールサンプルを用いたシーケンスは実施できたが、現有のノートPCではリアルタイムでのモニタリングが実施できないことが判明した。2019年度の予算では、新規のノートPCが購入できなかったため、年度内に完全なセットアップを実施することができなかった。 以上より、研究の進捗状況は、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
MinIONのセットアップについては、新年度早々にMacBook Proを購入し、リアルタイムでのモニタリングが可能となった。今後は、2019年度に購入したフローセルのチェックを行っていく予定である。 研究分担者の川合、案浦は種々のヒトマラリア、サルマラリア、ネズミマラリアを保有している。サルからサルマラリアを検出するためには、ターゲットのDNAを効率よく増幅できるPCRの実験系が必要となる。そこで、研究分担者らが保有しているサンプルを用いて、もっとも有効なユニバーサルプライマーを選定するとともにナノポアシーケンシングに適したPCRの条件を確立する。これらを用いて増幅したPCR産物を用いて、MinIONにおけるシーケンスの条件を検討する。さらに、得られたシーケンスデータの解析法を確立する。 2020年度もタイ国立霊長類センターで実施されるカニクイザルの定期健康診断時にサンプルを採取するとともに、同センターが実施している野生ザルの捕獲調査にも同行し、サンプルを収集する予定であった。しかし、新型コロナウイルスの蔓延により、日本国内においてもタイにおいても、移動を伴った研究活動の実施が困難な状況にある。今後は、これらの状況が改善し次第すぐに実施できるように情報交換をしつつ、上述のナノポアシーケンシングの手技の確立のため国内における実験を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月に再度タイを訪問し、Uthaipibull 博士と研究打ち合わせをするとともにナノポアシーケンシングに適したPCRの条件を検討する予定であったが、新型コロナウイルス蔓延のため、中止となった。また、ノートPCのスペック不足により実験が中断したため、関連する試薬等の購入も中止した。 2020年度に渡航が可能となった場合、できるだけ早期に渡航し、Uthaipibull 博士の研究室を訪問する予定である。新型コロナウイルスの状況が改善せず渡航できない状況が長引いた場合、現在別のプロジェクトで実施しているアカゲザル、リスザル、コモンマーモセットへの感染実験のサンプルを利用して、ナノポアシーケンシングの手技を確立する。
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