研究課題/領域番号 |
19KK0206
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
石野 智子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (40402680)
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研究分担者 |
橘 真由美 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 助教 (00301325)
馬場 みなみ 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 研究員 (00814906) [辞退]
鳥居 本美 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 特命教授 (20164072)
入子 英幸 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (60346674)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | 三日熱マラリア原虫 / タイ王国 / 伝搬阻止ワクチン |
研究実績の概要 |
主にアジアで流行する三日熱マラリアは、致死性の低さおよび原虫の入手が困難なことから、保健衛生や経済活動面における影響の大きさにも関わらず対策が遅れている。媒介蚊の体内でマラリア原虫の発育を止める伝搬阻止ワクチンの開発が期待されているが、未だ実用化されたものはない。本研究は、流行地の住人の血漿に 伝搬阻止効果が認められることに着目し、自然感染により獲得された伝搬阻止抗体が、どの原虫タンパク質によって誘導されたかを明らかにすることで、有効なワクチン抗原を探索することを目的とし、タイ王国の研究者と連携し共同研究として実施する。 本課題では、伝搬阻止効果を持つ患者血漿により共通に認識されるタンパク質をプロテインアレイを用いてスクリーニングを実施する。プロテインアレイの作成にあたり、プロテオーム解析のほか、熱帯熱マラリア原虫を標的とした生殖母体タンパク質アレイの情報を参考に、生殖母体、生殖体で発現し、表面あるいは分泌されることが予想されるタンパク質を301種類選定した。また、フィールドに出られない状況を踏まえ、標的タンパク質のみを三日熱マラリア原虫型に置換した遺伝子改変ネズミマラリア原虫を作出した。野生型に比べて効率は低いものの、蚊の体内でのオーシスト形成が認められ、これをモデルとして用いて、抗体の特異性のチェックや伝搬阻止効果の測定が実験室内で実施できるようになった。またさらに候補抗原を増やす目的で、2つのタンパク質について、抗体を作成し、ネズミマラリア原虫を用いて伝搬における影響を調べたが、抑制する効果は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍のため、海外渡航が大きく制限され実施できなかったため。また、アルファスクリーニングに用いるチップの納期が大幅に遅れているため。
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今後の研究の推進方策 |
準備したプロテインアレイを用いて、すでに伝搬阻止効果が認められている数種類の患者血清、およびネガティブコントロールの血清を用いて、アルファスクリーニング法により伝搬阻止効果と相関して相互作用が見られる原虫タンパク質が検出されるか検証する。また、新型コロナウイルス感染状況次第で、タイ王国を訪問し、伝搬阻止効果のある患者血清をさらに収集する。 伝搬阻止効果と相関する原虫タンパク質が見出されれば、そのタンパク質に対する抗体を作成し、実際に患者由来の三日熱マラリア原虫感染赤血球と混合させて 人工的に蚊に吸血させることで、伝搬阻止効果を測定する。またこれらのタンパク質局在を免疫電顕法により明らかにする。コロナの感染状況および、タイ王国におけるマラリア患者数減少の傾向によっては、前年度までに確立した、ネズミマラリア原虫に標的タンパク質を発現させる実験系において、新規候補抗原の探索およびその抗体の伝搬阻害効果を測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
タイへの渡航費として計画していた旅費が、コロナによる渡航中止により執行できなかったため。また、アルファスクリーニングに必要な消耗品の入手が困難であったため。さらに、フィールド研究で得られたサンプルをもとに計画していた次の実験も延期を余儀なくされている。次年度は、コロナの感染状況を見ながら、渡航が可能と思われるので、マラリア流行シーズンを考慮し、フィールド調査を予定している。その成果をもとに、あるいは、一部を実験室内で実施できる構築中の実験系を利用することで、次年度は本プロジェクトを遂行できると考えている。
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