研究課題
三日熱マラリアは、致死性の低さおよび原虫の入手が困難なことから、経済や保健衛生における影響の大きさにかかわらず、対策が遅れている。蚊による媒介ステージを標的とした伝搬阻止ワクチンの開発が期待されているが、候補抗原のヒトでの免疫原性の低さが障害となり実用化に至っていない。本研究は、自然感染の結果獲得した伝搬阻止抗体が認識する原虫タンパク質を同定することを目的とする。感染流行地であるタイ王国の研究者と共同研究を行うことで、三日熱マラリア原虫の感染赤血球、および伝搬阻止効果のある抗血清という、双方とも極めて得難い材料を用いることが可能となり、本研究が遂行できる。感染流行地の患者血液を、人工的にハマダラカ (Anopheles dirus) に吸血させるが、同時に、その血清成分を培地に置換して再構築したものを吸血させる。1週間後に蚊の消化管上に見られる原虫(オーシスト)を計測し、その結果を比較し各患者の血清中に感染阻止効果のある成分が含まれるかどうか解析した。伝搬阻止効果の認められた血清は、さらにIgGを除き、抗体による伝搬阻止効果か否か結論を得た。調べた患者血清37種類のうち、22種類で伝搬阻害効果が認められ、18のサンプルでは抗体による阻害効果が認められた。これらの阻害効果が示された血清中に含まれる既知の伝搬阻害抗体の含有量と阻害効果の相関を調べたところ、3種類の標的タンパク質に対し、強い相関は認められなかった。以上のことから、患者血清中から、これまで見出されてこなかった伝搬阻害抗体を探索することで、新規伝搬阻止ワクチンの開発につながる可能性が提示された。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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